内容説明
明確に定まった境界も、単一の言語や国民集団ももたないまま、千年以上にわたり中央ヨーロッパのほぼ全域に支配をおよぼした神聖ローマ帝国。国民国家の枠組みが揺らぐ現在、この帝国像をめぐる歴史研究にも見直しの気運が高まっている。「神聖ローマ帝国とは何か」という問題を真正面にすえ、近年の研究動向を視野に入れて帝国のたどった歴史と主要制度を的確に解説する。
目次
第1章 神聖ローマ帝国はどう説明されてきたか(出発点;さまざまな見解と解釈 ほか)
第2章 国制の発展(一四九五年までの発展;帝国改造の時代 ほか)
第3章 主要な制度と傾向(皇帝;帝国議会 ほか)
第4章 むすび
著者等紹介
ウィルスン,ピーター・H.[ウィルスン,ピーターH.][Wilson,Peter H.]
イギリス、サンダーランド大学教授。ドイツ近世史
山本文彦[ヤマモトフミヒコ]
1961年生まれ。ドイツ近世史。北海道大学大学院文学研究科助教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
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MUNEKAZ
18
他の方のレビューにもあるが、神聖ローマ帝国の国制と研究史について述べた密度の濃い内容で、全く入門ではない(ある程度知識がないと辛い)。ただよくあるハプスブルク帝国史にならず、真正面から「神聖ローマ帝国」とは何だったのかを考える真摯な一冊でもある。ヴォルテールには切って捨てられた帝国の国制も、実は多様な可能性を秘めており、ただ単に衰退の二文字で片づけてはいけないんだよと繰り返し述べている。衰退ではなく変化と捉えるあたり、昨今の戦国期室町幕府の研究にも似た香りを感じたり。2023/02/01
wang
2
ハプスブルク家が皇帝位を世襲することで、変革していった過程。周辺諸国が着々と封建国家として強化する中で領邦諸侯は権力を強化したい。皇帝も中央集権化したいと願う。が、税収にしろ軍隊にしろ上手くいかなかった。オスマントルコの侵略、プロテスタントの台頭と周辺環境に押されつつ帝国議会を整備し選帝侯に対抗する宮中裁判所を設け、上級裁判所としての体裁を整えるなど帝国としての一体化も進める。が、諸侯領の集積化、帝国外の王権獲得など一部諸侯の台頭により権力が分散する中、ナポレオンにより打ち砕かれてしまった。2021/10/07
ELW
1
序論がしっかりしているので、博士論文を読まされた感がある。 各階層がそれぞれの利益を追求した結果、“帝国”がなんともいえ ない中途半端なものになっていたという印象を持つことはできたが、 ただの好事家には難しい内容だった。スフォルツァ家以降も帝国 イタリアというものが残留していたのが意外で面白かった。 『戦う ハプスブルク家』を読んでおいて良かった。2013/06/04
shin
1
入門書と題打っている割には説明が分かりにくい。特に国政の流れがこの本単体ではよくつかめないのではないか。第3章の帝国の制度の説明は興味深かった。2012/11/20
wang
1
神聖ローマ帝国の政治体制などあまりよく知られていない実態を多数の研究をまとめるかたちでコンパクトに記述。帝国裁判所、帝国税、帝国クライス、帝国防衛、帝国議会等テーマ別に述べているが、領邦に分割され常に拡大変化し続けているため、なかなか内容を把握しにくい。希少ではあるが、できればもう少しわかりやすい説明であればよかった。2011/02/09
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