出版社内容情報
或る出来事--しかも、暴力的な--体験を言葉で語ることは果たして可能だろうか。もし不可能なら、その者の死とともにその出来事は、起こらなかったものとして歴史の闇に葬られてしまうだろう。出来事の記憶が、人間の死を越えて生き延びるために、それは語られねばならない。だが、誰が、どのように語り得るのだろうか。
【目次】
はじめに――記憶を分有するために
Ⅰ 記憶の表象と物語の限界
第1章 記憶の主体
1 到来する記憶
2 余剰と暴力
第2章 出来事の表象
1 小説という語り
2 表象しうる現実の外部
第3章 物語の陥穿
1 虚構のリアリズム
2 出来事の現実
3 物語への欲望
4 物語の欺瞞/欺瞞の物語
5 否認される他者
第4章 記憶のポリティクス
1 傷痍兵という出来事
2 記憶を語るということ
3 否認の共犯者
Ⅱ 表象の不可能性を超えて
第1章 転移する記憶
1 外部の他者へ至る道筋
2 ヘル・ウィズ・ベイブ・ルース
第2章 領有することの不可能性
1 封印される余剰
2 偽りのプロット
3 単独性・痕跡・他者
第3章 出来事を生きる
1 出来事の帰属
2 難民的生の生成
Ⅲ 基本文献案内
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
あきあかね
11
四半世紀前に出版された思考のフロンティアシリーズの新装版。アラブ文学やパレスチナ問題を専門とする著者による本書は、冒頭からかつてパレスチナで起こった虐殺という出来事の記憶から始まるが、現代の世界と既視感があることが恐ろしかった。 ナチスの絶滅収容所という暴力的な出来事の記憶や、著者が幼い頃に見た街角の傷痍兵の戦争の記憶といった重いテーマが続く中、是枝裕和監督の映画『ワンダフルライフ』の話が異彩を放っていた。死者たちが、生きていた時に一番幸せだった記憶を語り、それを再現する映画を撮って、⇒2026/10/01




