内容説明
安楽死などの従来の問題に加えて、新たに出現した医療問題を取り上げ、それらを合理的に考える手法をわかりやすく解説。考え方の筋道を吟味する(クリティカル・シンキング)訓練を行う、医療倫理の簡潔な入門書。
目次
1 医療倫理学がおもしろいわけ
2 安楽死―優れた医療行為か、殺人か
3 なぜ「統計上の」人々を過小評価すると多くの生命が失われるのか
4 存在していない人々―少なくとも今のところは
5 推論のための道具箱
6 狂気についての矛盾した考え
7 現代の遺伝学と伝統的な守秘義務の限界
8 医学研究は新たな帝国主義か
9 一般診療、貴族院に行く
著者等紹介
ホープ,トニー[ホープ,トニー][Hope,Tony]
医療倫理学、精神科医。現在、オックスフォード大学教授
児玉聡[コダマサトシ]
1974年生。倫理学。東京大学大学院医学系研究科助手
赤林朗[アカバヤシアキラ]
1958年生。医療倫理学。東京大学大学院医学系研究科教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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大道寺
4
医療倫理学への入門書であり同時に倫理学自体への良い入門書のひとつでもある。私は倫理学の入門書として読んだ。現代医学において倫理的議論のある具体的なケースを各章で挙げて、論じていく。著者は功利主義や義務論といった特定の道徳哲学的立場に立つのではなく、各章において倫理における合理性を重視して議論している(ハリネズミと狐の話)。合理的思考と直観は背反することがよくある。著者はこれに対しロールズの反省的均衡(両者を絶えず見直していく)を提示する。その具体的なやり方のひとつは道徳的想像力を広げるということである。2013/01/13
jjm
2
哲学書にありがちな回答がなくなんだかわからない、こういう意見もある、一方でこういう意見もある、という形式のものではなく、著者の考え方の方針と意見がはっきりと述べられている。例えば自発的積極的安楽死は、患者の最善の利益を考えれば正しいと言い切る。また非同一性の問題では、聾の子供を敢えて生むを例に、いかなる危害も与えられていない、存在しなかった場合と比較することがそもそもおかしいと言う。直観的には決してそうは思わないが、反論もまた難しい。
カランコエ
2
ややこしいけど知っておくべき問題。答えはなく、考えさせられる。2017/03/20
陽香
2
200803052016/02/28
わんぱら
1
医療倫理の入門書という位置付けだけど、歴史の解説とかではなく、実践で入門する感じ。反省的均衡を採用してて基本は帰結主義なのに直観によるアドホックな修正をしてるとこは気に入らないが、非同一性問題を扱っているなど内容はなかなか高度。政治哲学の入門書としてもよさそう。2017/12/24