世界歴史選書 貨幣システムの世界史―“非対称性”をよむ （増補新版）

黒田 明伸【著】

岩波書店（2014/03発売）

• サイズ B6判／ページ数 263,／高さ 20cm
• 商品コード 9784000268585
• NDC分類 337.2
• Cコード C0322

出版社内容情報

本国をはるか離れた中東で流通したオーストリア銀貨。環シナ海世界で広く使用された銅銭。超零細通貨、モルディブ産の貝貨……。貨幣と市場の歴史は、謎にみちている。その複雑で多層的な世界をグローバルな視野のもとによみとき、世界史のなかの貨幣現象を根本的にとらえなおす。多くの議論を呼んだ旧著に「東アジア貨幣史の中の中世後期日本」を加えた新版。

内容説明

本国をはるか離れた中東地域で、二〇世紀初頭まで流通したオーストリアのマリア・テレジア銀貨。製造コストが額面よりも高い銅銭を発行し、しばしば「良貨が悪貨を駆逐する」事態をつくりあげた中華帝国。インドで流通した桁はずれの零細通貨、モルディヴ産貝貨…。日々の営みに欠かすことのできない貨幣。しかし、その歴史はいまだ謎に満ちており、「貨幣とは何か」という問いは、わたしたちを惹きつけてやまない。貨幣と市場の複雑で多層的な世界を“非対称性”という概念を手がかりによみとき、世界史のなかの貨幣現象を根本的にとらえなおす。多くの議論を呼んだ旧著に「東アジア貨幣史の中の中世後期日本」を加えた新版。

目次

序章　貨幣の非対称性
第１章　越境する回路―紅海のマリア・テレジア銀貨
第２章　貨幣システムの世界史
第３章　競存する貨幣たち―一八世紀末ベンガル、そして中国
第４章　中国貨幣の世界―画一性と多様性の均衡構造
第５章　海を越えた銅銭―環シナ海銭貨共同体とその解体
第６章　社会制度、市場、そして貨幣―地域流動性の比較史
第７章　本位制の勝利―埋没する地域流動性
終章　市場の非対称性
補論　東アジア貨幣史の中の中世後期日本

著者等紹介

黒田明伸［クロダアキノブ］
１９５８年生。世界貨幣史、中国経済史。現在、東京大学東洋文化研究所教授（本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです）
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感想・レビュー

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[EnJoeToh]

やはりすごい。

2017/03/04

[月をみるもの]

メインの手交貨幣の話は確かにめっちゃ面白いんだけど、やっぱ信用（預金）貨幣との住み分けの話がないのは物足りない。。。安富さんたちは、複数の商品に対する欲望の一致（財の交換）を効率化する手段として貨幣が生まれる状況をシミュレートしてたわけだが、著者の考える状況はこれとは異なる。誰もが同じようなものを持ち、同じようなものを欲しているのだが（たとえば穀物）、そのタイミングが（季節性により）ずれているために必要な調整機構（時の交換）が貨幣だと言うのだ。いっぺん柄谷の交換論との対応を考えてみないとあかんな。。

2020/03/23

[MUNEKAZ]

現代の一国一通貨制度を必然のものとせず、地域間の決済に使われる「決済通貨」とその下層で使われる少額でドメスティックな「現地通貨」の混交状態を、中世から近世にかけての豊富な事例で論じた一冊。この二つの通貨の間には兌換性はなく、国家の統制を超えて異なる回路が幾つも併存する様は、なかなか刺激的。「金は天下の廻りもの」だけど「タンス預金」が減らないのも、そもそも貨幣が相反する要素を併せ持つからで、その解消のために異なる貨幣システムが一地域内で両立しても不思議ではないのかもしれない。

2018/04/15

[nranjen]

マリア・テレジア銀貨の存在、その不思議から社会を成り立たせてきた貨幣の今まで知らなかった一面を垣間見た。ひっくりかえせば、今あたりまえだと思っている貨幣の価値そのものが、実は特殊なものであるのか。それぞれの貨幣が違う水準の取引で用いられてきたことに驚きを感じた。しかもこの角度から世界史を構築するのもすごい。巻末の資料からもすばらしい論文とはこういうものなのだなと学んだ。

2017/05/04

[purufeido]

貨幣論について多少の前提知識は要するがあくまで基本的なことがわかっていれば読める程度には平易に書かれている。信用貨幣ではない実物としての貨幣の流れには貴金属で大口の貨幣が主な商人の買い付けなど領域的な上層の流れと、少額で長らくは商品貨幣と併用されてきた農民などが主の地域的な下層の流れが存在し、その二者は需要の季節性など複数の要因から必ずしも対象的なものではないということについて歴史的な事例を紹介しつつ書かれている。

2016/07/13