出版社内容情報
ローマ帝国の最北端ブリテン島.地中海帝国ローマはなぜもう1つの海を越えたのか.多くの遺跡は何を物語るのか.文献と考古史料,さらに2つの世界帝国の自他認識に新たな光をあて,帝国ローマの意味に迫る.
★本書は『書評空間 KINOKUNIYA BOOKLOG』にエントリーされています。
内容説明
地中海帝国ローマはなぜもう一つの海を越えたのか。ローマと大英帝国、二つの世界帝国の自他認識に光をあて、北辺に現れた帝国ローマの意味と属州ブリタンニアの実像に迫る。
目次
序章 なぜローマン・ブリテンか
第1章 ローマ帝国と大英帝国
第2章 海峡を越えたローマ人―ローマ人の見た古代ブリテン
第3章 征服と支配―女王ボウディッカの反乱と歴史家タキトゥス
第4章 属州ブリタンニアと「ローマ化」―ブリテン島はローマ帝国であったか
第5章 北辺のローマ帝国―辺境要塞兵士の残した木板文書を読む
終章 海のかなたのローマ帝国
著者等紹介
南川高志[ミナミカワタカシ]
1955年生。古代ローマ史。現在、京都大学大学院文学研究科教授
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふぁきべ
9
ローマ史をある程度知っている方なら、ブリテン島はローマ化が進み切らなかった辺境、みたいなイメージを持っているかもしれない。あるいはローマ化に抵抗したものの薄められたケルト文化の象徴、というイメージかもしれない。本書はそのイメージをガラッと変えてくれるに違いない。歴史学的研究と考古学的研究をうまく混交させ、概説書に終わっていないところは毎度のことながら南川教授の素晴らしいところ。読みやすく、それでいてアカデミックなところにも適度に踏み込める。文庫化されれば◎。2019/03/10
viola
9
おっしゃる通り、古代ローマとブリテンについて書かれた日本語の本っていうのはかなり少ない。もっとも読みやすく、分かりやすいのは恐らくこれだと思います。ブルータス伝説ではなく、古代のブリテンがどのようなものであったのか。ブリテンとローマの関係を知りたいときに一番分かりやすいものもこれかなぁ。ただ、なんせ日本語文献がない!ので、章ごとに参考文献は載せてくれて入るけれど注釈をちゃんと付けて欲しかったです。ホリンシェッドがないんだからタキトゥスも翻訳ないんだと思っていましたが、あったんだーー!というのも収穫の一つ。2012/07/02
j1296118
2
「従来の説明」とサトクリフとそれにケルトな諸々の本が混合したイメージが形成されていた脳味噌を揺らしに来る本。 ローマとそれによる変容の位置付けがイギリス社会の状況に応じて揺れ動いているのは、こうした評価の変動はどこでもある事なのだなあ、と日本のアレやコレやも含めて思い浮かべつつ改めてしみじみ思う次第2015/01/06
silk
2
2011年に読んだものを再読。ローマンブリテン時代のブリテン島の状況を検討した日本語の数少ない本。文献のみならず、考古資料も活用して、ブリテン島で起こったとされていた「ローマ化」が決して統一して行われていたわけではなく、これまでの在地の文化がある程度継続していたことがわかる。タイトルはダブルミーニングであり、最後に納得させられた。2013/05/22
サアベドラ
2
邦語で読める属州ブリタンニア史概説書はこれくらいしかないので、そっちの方に興味のある人は必読。ローマ化って言っても結局たいしたことなかったんですよ、ブリテンなんてしょせん田舎だし、という趣旨。アグリコラぐらいまでがメインで後期・末期はあまり書かれていません。そのため、アーサーのアの字も出て来ません。個人的には少し残念です。ローマ系の史料しか使ってないので当然ですけどね。『第九軍団の鷲』なんかがちょうどこの時代を扱っているのでそちらに興味がある方も副読本にいいのではないでしょうか。2008/10/13