出版社内容情報
本書は,律令制国家として完成をみた日本の古代国家の形態と機能を分析し,その歴史的特質を解明する.著者は,古代国家が直面したアクチュアルな課題に着目し,古代国家を諸階級の総体的運動の総括として位置づける.また,国家成立史における国際的契機,大化の改新などの問題点についても,新たな視角から論究されている.
内容説明
「古代国家の一般的属性と諸機能と特殊性を全面的にあきらかに」することを目指した本書は、日本国家の起源をめぐる戦後歴史学の最高の達成であると同時に、現代日本の国家主義への原理的批判の書でもある。厳密な学問的努力が持ちうるアクチュアリティを、本書ほど示すものはない。
目次
第1章 国家成立史における国際的契機(交通の問題、戦争と内乱の周期;権力集中の諸類型、推古朝 ほか)
第2章 大化改新の史的意義(改新の課題、史料批判の問題;人民の地域的編成、王民制から公民制へ ほか)
第3章 国家機構と古代官僚制の成立(過渡期としての天智朝;「政ノ要ハ軍事ナリ」天武・持統朝 ほか)
第4章 古代国家と生産関係(首長制の生産関係;国造制と国家の成立過程)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
翔亀
23
第1章「国家成立史における国際的契機」について。推古から天智にかけての政変続き(大化の改新、壬申の乱)の時期。著者は、蘇我入鹿とか中大兄皇子といった個人の意図や政略からでのみ説明することの愚を戒める。確かにこの時代は、錚々たる天皇/皇族の政治抗争ばかりが語られるが、本書では、例えば大化の改新は、当時の唐と朝鮮三国の東アジア国際情勢の中での蘇我氏の外交政策の破綻に契機を見出すなど、「政争ではなく政策論争を」という現代にも通じる視点に啓発される。他にも遷都/天皇/漢文の国際的契機など論点沢山で密度が高い!2014/06/20
トックン
0
石母田は「大化の改新」をクーデターとも革命とも捉えず古代国家とは<総体的奴隷制>であるとの立場に立つ。これには現代ではオリエンタリズム論に過ぎぬと批判の多いウィットフォーゲルが1957年に『東洋的専制』(オリエンタル・デスポティズム)で言った「水の理論」との関わりが重要。「水の理論」とは治水や灌漑が整備されていたが為にアジアには奴隷制は存在せず、この水の整備によって全体主義が起こり得たとするもの。この理論を講座派的に批判し、石母田は土地の私有性が無く(班田収授)、王民として存在していた人々に奴隷制を見る。2017/07/30
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