出版社内容情報
人間の意識や行為は時代・民族文化を特徴づける精神的風土に規定され,そのことを究明する人間学こそ社会科学成立の基盤であり社会科学の方法の一環である.このような視点から本書第1部では『経済学批判・序言』の再検討によってマルクスを捉えなおし,第2部では河上肇の思想を再構成するなかで社会科学の在り方を考える.
内容説明
社会科学が成立するための基盤として人間学が存在しなければならないのではないか。抽象的な人間でなく、歴史的・社会的な人間に関する学が。マルクスにおける人間的自然の把握と、河上肇による社会科学の人間学的基礎づけのなかに、今日に継承さるべき方法的遺産を見出す、挑発の書。
目次
第1部 法哲学批判と経済学批判(『経済学批判・序言』;「基本的人権」論争によせて)
第2部 河上肇の唯物史観研究(社会科学の方法と人間学;いわゆる社会的意識形態について)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
壱萬弐仟縁
14
1973年初出。Z.JudenfrageのWerkeによると、「政治的国家は市民社会にたいして、ちょうど天上が地上にたいするのと同じように、精神主義的にのぞむ。政治的国家は市民社会にたいして、宗教が俗界の偏狭に対立しそれを克服するのと同じように対立し、同じ仕方でそれを克服する」(62頁)。この指摘が気になった。宗教が絡んでいるので評者には理解が遠のく。つまり、政治的国家と市民社会の二極分裂という近代社会の構造性(64頁)。ヘーゲルとマルクスの市民社会の扱い方の違いがあるという(66頁)。2013/11/13