出版社内容情報
不条理な悲劇を生き,神と対決するヨブ.イスラエルの知恵の集大成・箴言.いずれも神と人間と世界の意味を問う切迫感に満ちている.その背後にひそむ民族の現実的・思想的危機を写し取る,新鮮かつ挑戦的な新訳.旧約聖書全15分冊完結.
内容説明
悪と不条理な苦難をめぐる対論/人を生へと押しやる“知恵”現実と精神の危機から発せられる、人間と世界の意味への切迫した問い。
目次
ヨブ記
箴言
著者等紹介
並木浩一[ナミキコウイチ]
1935年生まれ。国際基督教大学卒業、東京教育大学大学院博士課程単位取得。現在、国際基督教大学人文科学科・比較文学研究科教授
勝村弘也[カツムラヒロヤ]
1946年生まれ。京都大学大学院博士課程単位取得退学。現在、神戸松蔭女子学院大学文学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
62
旧約聖書では諸書と分類される2書がおさめられています。信仰、格言の言葉が凝縮されていると言えるでしょう。苦難と正面から向き合うことで強められる信仰と、様々な教えから学んでいく知恵。これらを持ち合わせることで、より神と結びつくのではないでしょうか。2017/12/11
syaori
53
ヨブは「完全でまっすぐな」人。義(ただ)しい人。その彼が言語に絶する災厄で撃たれ、友人たちは因果応報を説いて彼を責める。神はどこにいるのか。ヨブは自己の義を訴え、悪の跳梁する社会を糾弾し、運命の不条理を叫ぶ。突然の天災や病や、不幸に遭ったとき、自分が一体何をしたのかと誰もが思うもの。悪いことなどしていないのに、世界の条理はどこにあるのか。ヨブが叫びの果てに「見た」ものは、その問題への一つの回答なのだと思います。願わくば、ヨブとともに「見た」と思ったそれが、苦しみに沈んだ時、私に力を与えてくれますように。2018/10/16
きゃんたか
19
聞くものは知識に過ぎない。智に働けば角が立つ。とかく世の中は不条理だ。財産を奪われ、家族を奪われ、健康はおろか、生きる意味さえ奪われたその果てに、砂塵の中でヨブが見たものは何だったのか。訓戒する友人への妥協を尽く拒んでまでして、ヨブが手離せなかったものとは何だったのか。さて、彼は正しかったのだろうか。人間ごときが正しいものか。この世の正しさなど有り得るのか。あなたの涙の一滴さえ奪い去られた時、それでも残るものがあるのなら、人の報いは虚しくは終わらない。我々はまず、見ることを学ばなければならない。2017/09/27
a67890
1
訳者は「エリフの弁論」を別筆者による後代の加筆とみなす ①神の正しさを問うこと自体の可否(エリフでは神議論自体が成立しない) ②「冥府」「穴」の用法2015/09/26
v&b
1
ヨブ記を中心に箴言はサッと。人間同士の対話は、前座といえば前座。ヨブの叫びと独白は悲痛なものがある。若いエリフのくだりは神の登場直前に挿入されている。これだけの古典なのに、どんな風にも解釈できるままに放置してあるのが凄い。いずれにせよ、神との応答では、非力で言葉少ななヨブと、背後に力をちらつかせる長口上のヤハウェが対照的。カラマーゾフ、ファウストはじめ数多の創作に息を吹き込んでいる。聖書から唯一ノルウェーブッククラブの100冊にランクイン。2015/09/21