渡良瀬

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 377p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000259408
  • NDC分類 913.6
  • Cコード C0093

内容説明

茨城県西部の町にある配電盤製造の工業団地。二八歳の南條拓は、東京での電気工としてのキャリアを捨て、一工員としてここで働き始めた。昭和の終焉も間近なざわついた空気のなか、葦原の広がる乾いた大地に新天地を求め、妻と三人の幼子を伴い移住してきたのだ。―『海燕』連載の未完の物語がついに完結―20年の歳月を経て甦った、傑作長編小説。

著者等紹介

佐伯一麦[サエキカズミ]
1959年、宮城県仙台市に生まれる。仙台第一高校卒業後、週刊誌記者。電気工など様々な職業を経験した後、作家となる。著書に『ア・ルース・ボーイ』(新潮文庫、三島由紀夫賞)、『鉄塔家族』(朝日文庫、大佛次郎賞)、『ノルゲ』(講談社、野間文芸賞)他多数(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

yoshida

136
佐伯一麦さんの私小説。長男の川崎病のため、空気の良いところに住もうと都内から茨城に引っ越した拓と家族。電気工から近くの配電盤工場へと転職し送られる日々が描かれる。同じ工員や取引先の社長とのふれあい。お互いを余り知らずに結婚した拓と幸子のやるせなさ。拓の暖かい団欒への憧憬が哀しい。給料日の豪華な食事を夫婦だけでしようとする幸子の姿に寂しさを覚えた。拓の心無い叱責で閉ざされた娘の心が少し開くラストに救いがある。拓と幸子の破局を感じずにはいられない。果たして、幸せな結婚、家庭生活とは何かと考えさせられた作品。2017/07/23

ハチアカデミー

15
20年の時を越えて甦った初期の傑作。「ショート・サーキット」を中心とした肉体労働期の作品群に連なるものであり、淡々と日々を抑えた筆致で綴られ、働く喜びと苦しみ、生活の喜びと苦しみがしみじみと伝わる。家族の病気と自身の起こした自動車事故の故に、茨城県西部へ移り住んだ男が語り手。職人として働くことの充実感と、作家でありながら作品を書くことの出来ない焦燥、そして平静を保ちながらも、どこかぎくしゃくとした家族関係。いつもどおりの佐伯作品だが、その作品への誠実さ、生活への誠実さを、いつもどおり堪能。2014/03/13

遠い日

10
佐伯一麦さんの若き日の苦悩がここにある。配電盤製造の現場の日常を濃やかに再現する佐伯さんの思いは、自分の感情や考えは日々の逐一のことどもに由来し、そこに宿る真実をだいじにしてこその人生だという信念によるものだ。主人公の南條拓の人物像は、初期の作品のいくつもと重なる。終焉間近の昭和を、流れ着くように居着いた茨城県西部の町で生きる拓たち家族。それからの佐伯さんの歩みを作品を辿ることで知ってきたが、20年の空白の後の完結をみた『渡良瀬』は、自分の20年とも重なるようで胸にじわりとこみ上げるものがあった。2015/01/26

冬雪涼

9
読後重たい気分になったのは、一所懸命家庭を築いている主人公の未来があまり幸福に見えなかった事・・・ そして自身の状況にも似ていたからか・・・  たのしみは三人の兒どもすくすくと大きくなれる姿みる時(橘曙覧) 望んでいる事はそれだけなんですが・・・ 2015/01/13

乱読999+α

7
東京から茨城の渡良瀬川近くに移住していた電気工、南條に写した作者本人の私小説。昭和から平成に移ろうとする天皇御崩御の自粛ムードと閉塞感の中で、病気に苦しむ子供達、エキセントリックな妻が少しずつ地域に馴染み、東京から、本来やりたい仕事から逃げた本人も居場所を見つける様子が、淡々と正確な日本語をもって精緻な描写で描き出されている。特別な何かが興る訳でもなく。何に感動する訳でもない。作者の草臥れた心情と幽かな希望、そして渡良瀬の情景がしみじみと読み取れた。2015/12/15

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/7835978
  • ご注意事項

最近チェックした商品