出版社内容情報
忘れがたい魔法を帯びた街、リオの魅力を、ブラジル文学と音楽の研究者である著者が、眩い筆致で綴る。
内容説明
光と風にふれる路上に集う人びとの、孤独と幸福。眩い筆致で綴られた、魔法的な街の記憶。
目次
1 路上、そして祝祭
2 カーニヴァル、サッカー
3 ファヴェーラ、軍政
4 ボサノヴァ
5 記憶、そして郷愁
6 旅の続き
著者等紹介
福嶋伸洋[フクシマノブヒロ]
共立女子大学文芸学部准教授。1978年、新潟県生まれ。東京大学在学中にボサノヴァと出会い、東京外国語大学大学院在学中の2003年、リオデジャネイロに1年間滞在(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
スミス市松
19
郷愁(サウダーヂ)とは「愛するものから離れている孤独の感覚である」という。自明かつ大切だった場所が失われいまや永久に手の届かないところになり果てていく過程において、――「何かに名前を付けるのは、それに最後の別れを告げるときだ」とアンドレ・ジッドが語るように――私たちはその場所に名前を与えて記憶の中から消却することで別の場所へ移り去っていくことができる。本書もまたそのような試みである。ブラジル文学者である著者はブラジルの詩や音楽、祝祭と郷愁についての断想を書き連ねていくが、(続)2016/10/23
とりから
8
「常夏の国に生まれ育った彼らにとって、雪が夢のような何かだとすれば、雪国育ちのぼくは長いあいだ彼らの夢のなかに住んでいたのかもしれない」。樅の木も雪もなく、海風が吹き抜ける、それでもその夜は、クリスマスだった。23歳の一年間をリオで過ごした筆者による時を経た回顧録。旅人の目には美しい姿だけが残る。黒と白の沿道、ビールやココナツを売る店、イパネマの海岸。開かれた祝祭的な街。サウダーテ《郷愁》という言葉は、大切な街から遠く離れてしまった筆者の淋しさと、それだけリオを愛したという幸福を雄弁に翻訳する。2025/11/10
fumi
5
昔大学のゼミの指導教官から言われた「巧い文章が書けるということは、論文を書くにあたっても何よりの強みになる」という言葉を思い出した。著者はエモい論文を書くことでも(一部の界隈で)知られているが、やはりというかなんというか、こうした散文では本領発揮というところだろうか。底抜けに明るいリオの風景を愛着たっぷりに描写しつつ、それが回想録という点によって愛着は別の色、つまり本書で幾度も登場する「サウダージ(哀愁)」をも纏うことになる。引用される数々の詩や紹介される楽曲からイメージが何層にも広がるのもまた愉しい。2017/07/23
ひろみ
4
日本に帰ってきてもなお、その空気の中から抜け出せていないことを郷愁(サウダーヂ)と呼びたい。2016/10/07
geromichi
3
サウダージでした。2019/04/18




