出版社内容情報
メディアは作家に何をもたらし、作家はメディアといかに切り結んだのか。関東大震災前後からアメリカ軍による占領期までのおよそ三〇年間、激変する社会の状況と真摯に向き合い、創作活動を続けた文学者横光利一。近代メディアの隆盛とともに、「文学の神様」にまで昇り詰めた作家の軌跡とその苦悩を時代のなかに描き出す。
内容説明
関東大震災前後からアメリカ軍による占領期までのおよそ三〇年間、激変する社会の状況と真摯に向き合い、創作活動を続けてきた文学者横光利一。近代メディアの盛り上がりの中、「文学の神様」になった作家の苦悩を鮮やかに浮かび上がらせる。
目次
第1部 習作期から新感覚派時代へ(「文学の洗礼を与へた」書物たち―鏡としての翻訳文学)
第2部 前衛の旗手として(「文壇といふ市場」へ―『文藝春秋』『文藝時代』『改造』との関連を中心に;「新しい感性の羅列」―交流する文学と映画)
第3部 文学の“神様”の誕生(「共同製作」の場―本文とメディアをめぐる探究;「国語への服従」―拡大するメディアと読者層)
第4部 検閲下の葛藤と再生への模索(「明日の小説」のために―占領期の表現と言論統制)
著者等紹介
十重田裕一[トエダヒロカズ]
1964年東京都生まれ。早稲田大学大学院文学研究科博士後期課程満期退学。博士(文学)。大妻女子大学を経て、現職は早稲田大学教授・国際文学館長(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
K.H.
6
戦前は「文学の神様」ともてはやされ、戦後は筆名が失墜する横光利一。本書は彼のデビュー前から、敗戦後すぐの死まで、雑誌・映画・検閲などを軸にその活動を追った研究書だ。読んでいて、横光とメディアとの関係は、決して一方的な影響というわけではなく、良くも悪くも「共作」と言えるのではないかと思った。検閲制度や「国語への服従」などへの内面の苦悩はいざ知らず、外からはどうも時代に歩調を合わせていたように見える(著者の意図からは外れるかもしれないけど)。敗戦後の価値転換の中で没落するのも、まあ仕方ないかな、と。2022/04/14