出版社内容情報
三日の旅終へて還らす君を待つ庭の夕すげ傾ぐを見つつ――
昭和から平成の終わりまでに詠まれながら、これまで私たちの目に触れることのなかった四六六首を収録する。よろこび、悲しみ、ときに言葉にできない驚きや共感……。うつろう時間の中で三一文字に凝縮された豊かな世界。その扉がいま開かれる。解説・永田和宏。
内容説明
昭和、平成の未発表歌四六六首。
目次
昭和 一九二首
平成 二七四首
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
48
穏やかでありながら、少し離れたところから周囲の方々だけでなく、社会の状況などにも触れられているのが新鮮。ご家族や自然を詠まれた歌には、慈愛に満ちた空気を感じさせていただける。一方で、社会の状況から詠まれた歌からは、そこにいる人々への思いが伝わってきて、こころを痛めていらっしゃるが、とても伝わってくる。そんな心ねをお持ちであることが素晴らしいと思う。2025/03/09
Koning
40
上皇后陛下の歌集。言われてみれば確かに記名の歌なかったね。皇太子妃殿下時代からつい先だっての平成の皇后陛下時代の歌。解説にある様に現代歌人としての腕がしっかりあると判る。というか思い知らされる。訳詩でもそうだけど、言葉の選び方がやはり良い。2025/04/09
あや
26
美智子様の未発表の和歌を永田和宏さんが宮内庁に問い合わせて出版に至った一冊。感情を露わにすることの許されないお立場にいらして静かな御言葉で御心の動きをご表現される。個人的には御家族を詠まれた作品に心惹かれました。 思ひつつ言ひ得ぬ心さやかにもしめせる詞(ことば)読むとき楽し/古式なる泳法なすと浜名湖に君行きませば子らの従ふ/帰り得ぬ故郷を持つ人らありて何もて復興と云ふやを知らず 永田和宏さんのご解説も、装幀も素敵な御本。2025/03/01
蒼
26
「まなこ閉ざし ひたすら楽したのし君の リンゴ食みいます 音を聞きつつ」 「かの日日も かく花びらは舞いをりぬ 被災の町を 訪ぬる道に」 美智子様が詠まれた和歌466首が収められた歌集は、自然やご自身の御子様や背の君であらせられる陛下への想いが込められていた。中でもこの2首に特に心惹かれた。自分如きには到底読みこなせはしないが、歌人美智子様の魅力が溢れる歌集だと拝読いたしました。2025/02/08
まぁみ
22
難しかった。理解力も語彙力も足りない私、まだまだ未熟者だと痛感。一首一首何度も何度も読みました。すんなり状況や場面が浮かばず、逆に深読みしてしまったり、自分が情けないったらありゃしない笑。父世代も社会人時代の部長さんも、皆口を揃えて、美智子さまと吉永小百合さんが好きだ言っていました。何度も歌を読み返している内に、あたたかくて博識でとても強い方だと感じました。皆に愛されるはずです。「五月来れば取りいだし見る武者人形子らすでにして育ちし今も」「思ひつつ言ひ得ぬ心さやかにもしめせる詞よむとき楽し」素敵だ…。2025/01/18