内容説明
ポール・ボウルズがモロッコの口承の物語群を聴き書き、編集・翻訳し、現代の物語として蘇らせた、新しい文学の冒険。幻想や恐怖に充ちた語りは、都市伝説や神話的ファンタジーの色彩をおび、現代の時空に潜む闇を照らす。物語や声の深い魅力を伝え、文学表現の可能性を問う、必読のアンソロジー。長年ボウルズを翻訳・研究してきた批評家・四方田犬彦の解説を付す。
著者等紹介
ボウルズ,ポール[ボウルズ,ポール] [Bowles,Paul]
1910‐1999。小説家・作曲家。ニューヨーク生まれ。1947年以降、モロッコ在住
越川芳明[コシカワヨシアキ]
1952年生まれ。明治大学文学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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藤月はな(灯れ松明の火)
46
所々に「女性=男の真摯な思いを裏切ったり、信仰を妨げるもの」という考えには納得できませんが、「アッラーが許せばいい」という論理が可笑しい。『異父兄弟』の家族にいるからこその孤独感とそこから離れた開放感の対比が一人暮らしをすることで父の顔色を伺ったり、侮蔑に精神をすり減らさなくて済んだ自分と重なって少し、切なかったです。『昨夜見た夢』と『蟻』、『狩猟者・・』が好きです。特に『狩猟者…』の御姫様はどうしようもない悪女だったのでラストににんまり。2014/08/28
らぱん
42
ボウルズが拾い集めた「声」は主にタンジェの最下層に属す文盲の男たちのもので、マグレブ語(モロッコ訛りのアラビア語)によって騙られている。装飾は抑えられ構造は単純で読み易い。内容的には貧困や暴力に不公平や不条理を含んだ苦いものが多いのだが、どこか突き抜けた可笑しみがあり、大いなる存在を受け入れている人たちの強さを感じた。不思議な自由さで、前後の関係性を無視して進んだり、あり得ない状況をあっさり受け入れたり、驚きの展開後にいきなり終わったり・・・投げっ放しが潔く面白い。タンジェの路地裏に行きたくなった。2019/07/22
もよ
14
ポール・ボウルズとモロッコ、どちらも初めてですが、このどこへ連れていかれるのか全く予想ができず、でも何故か「そうかもね」と思わせられる淡々とした語り口が最高でした。2017/08/17
shamrock
13
ポール・ボウルズがモロッコで聞き取り訳した物語の数々。不思議な読書体験だった。イスラム圏、北アフリカの文化、風習をもっと知ってれば、もっと楽しめたのかな、という感じ。ではあるが、幻惑されて、ページを捲る手が止まらない。後半に納められたムラーベトの語った物語が、気に入った。でもそれはわかりやすい話が多かったからかもしれない。ライヤーシーの「異父兄弟」が一番グッときた。同じくライヤーシーが語りボウルズが訳し出版した「穴だらけの人生」のいち挿話とのことで、そちらも読んでみたい。邦訳はされてないんだろうか。2014/05/26
刳森伸一
7
幻想物語というより民話、口承文学といった方がいい。民話といっても西欧の民話とは違った味わいがある。表向きはイスラム的だが、実際はもっと土着的でイスラム風の味付けがされているに過ぎないと思う。短い物語であっても、どこに終着するか分からない感じがよい。2017/07/02
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