出版社内容情報
茂吉は太平洋戦争末期に戦争歌集『萬軍』を自ら編んだ.しかし敗戦によって出版は取りやめ,原稿は門弟佐藤佐太郎の厳重な保管下に入ったが,いつしか出所不明の謄写版本や刊本が出回るようになった.茂吉生誕130年の今年,茂吉と戦争の問題に向き合うために,茂吉―佐藤佐太
目次
第1部 (二つの歌集『萬軍』;歌集『萬軍』の成立;茂吉の戦争感;太平洋戦争下の茂吉;戦時下作をめぐる茂吉批判)
第2部 (歌集『萬軍』全歌検証)
影印 歌集『萬軍』自筆原稿
著者等紹介
秋葉四郎[アキバシロウ]
昭和12年(1937)千葉県生れ。歌人。歌誌「歩道」編集人。博士(文学)(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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がんぞ
1
戦後、高村光太郎などは戦意鼓舞の詩を書いたことを恥じて山中に隠居したりしたが歌人は「戦時に国民が勝ちたい、勝とうという気持ちを歌に詠むのは当然」とした。競作を依頼されたりするが平凡を避けるのに苦心。「腹が減ると歌が出来ん」。(昭和20年4月5日の述懐)「これで和平ということになれば属国だな。いつら働いても税金にとられてひどい生活になるよ。僕は第一次大戦敗戦後ドイツに留学していたからよくわかるよ」今も語り伝えられる凄まじいインフレ(貯金が無価値になる)があった。東京大空襲からは敗戦を覚悟しておられたようだ。2015/03/06
メルセ・ひすい
1
あヽ山本元帥 なげかむに言コトも絶えつつ天地アメツチも極まらむとぞかなしみわたる もののふは和ノドにし死なじとさやけくも天アメのみなかにかくりたまひぬ かぎりなき勲功イサヲシまちし国民クニタミは今のうつつを泣くに堪へめや たたかひの常とこそいへますらをはいたぶるにしも直道タダヂなるはや … 斎藤茂吉が日米戦争下の作品を自ら選出した歌集で、2種類の形で世に流布している「萬軍」。茂吉の門弟・佐藤佐太郎が保存していた自筆原稿に基づき、その全容を明らかにする。自筆原稿の影印も収録。2012/10/19