出版社内容情報
なぜ,あの日まで,これほど危険な原子力発電への「世論」の支持は上昇していたのか.原発だけではない.道路建設,捕鯨,使用済み核燃料の廃棄施設建設……,関係者への直撃取材で明らかになった,国策遂行のためのツールの数々.限りなく誘導的な世論調査,どこまでも営利的な非営利団体.民意を司る祭祀たちの姿を追う.
■ 著者からのメッセージ(岩波書店ホームページより)
斎藤貴男
社会は民意の集合体である.私たちはそう教えられ,信じてきました.でなければ何のための民主主義かと.
問題は,ではその民意が,どのように形成されているか,そして,社会を構築するのにふさわしい水準に達しているのか,という点です.
原発のいわゆる安全神話.しかも低コストで,環境にも優しく,そもそも原発がなければ資源の乏しい日本は立ち行かないなどとする立場は,なるほど民意でした.3.11で福島第一原発が爆発し,放射能汚染のただ中での生活を強いられても,なお多数の民意は揺らいでいない,ように見えます.
あるいは事業仕分け,道路,捕鯨,東京都政,等々.検証すればするほど,単に世論誘導というだけでは捉えきれない,権力に人間が操られている実態が浮き彫りになっていきます.
もっとも,操られた結果であっても,それもまた民意には違いない.社会のあり方を考えるための必読書を書いたつもりです.
■ 目次
はじめに
第1章 つくられた原子力神話(1)
なぜ知事は“抹殺”されたのか/原発政策への異議申し立て/保守政治家が抱いた原子力への疑問/NUMOのキャンペーン/原発政策に寄り添う人脈/早稲田環境塾/原発は“エコ”か/蟹瀬誠一氏インタビュー
第2章 つくられた原子力神話(2)
「核のゴミ」と「エネキャラバン」/消し去られた質問/マスコミを貫く「四位一体」/全国地方新聞社連合会/原子力教育/子ども向けの原子力広報/原子力の教育への侵出/原子力文化振興財団
第3章 国策PR
怒濤のような広報活動/「広告じゃない,運動だ」/国策というビジネスチャンス/広告をめぐる環境の激変/溶融する記事と広告/世論操作とどう違うのか/大型化する国策PR/広告主にへつらうメディア/電通という虎の尾/国策と公共広告
第4章 事業仕分けの思想
9692億円/「意図せざる革命」/浮かび上がる疑問/仕分け人たち/キーマン/事業仕分けの由来/新しい公共管理/思想の欠如
第5章 道路とNPO
道づくりと女性/国土交通省に見捨てられた/行政の下請け化するNPO/道守九州会議/道路系NPOへの逆風/教育より前に道路/“新しい公共”とは
第6章 五輪招致という虚妄
再び動き出したオリンピック招致/会場計画のミスリード/動員された小学生たち/盛り上がらない世論/奇妙な世論調査/招致をめぐる「不都合な真実」/五輪招致の資格
第7章 仕組まれる選挙
森田農場/疑惑噴出に支持率低下/「格差は神の与えた試練」/「完全無所属」という嘘/「子どもの意見であると思っております」/「ブログ市長」が引き起こした激震/竹原劇場/既存秩序の破壊者/敗北/プロパガンダ選挙の祭司
第8章 捕鯨国ニッポンの登場
「捕鯨国日本」の嘆き/高まらない世論/世論構築/捕鯨問題懇談会/錯綜するイメージ戦略/反捕鯨運動の行方/鯨肉へのノスタルジー/「海の靖国問題」
あとがき
初出一覧
内容説明
この半世紀、原子力発電をめぐる世論は移り変わってきた。「夢のエネルギー源」として導入された頃には歓迎され、スリーマイル・チェルノブイリの大事故では失速し、片方でオイルショックや地球温暖化問題では盛り返した。3・11まで、「民意」は「クリーンで安全な原子力」を歓迎していた。原子力ルネサンス、原子力立国、景気のいい呼び声が世論をくすぐった。世論はどのように形成されたのか。どこまでも営利的な非営利団体、限りなく誘導的な世論調査、ばらまかれる広告宣伝費…。原発だけではない。道路建設、捕鯨、使用済み核燃料の処分施設。国策を遂行するべく、民意を偽装し、調達し、操作するために磨き上げられたツールの数々が取材を通じて明らかになっていく。
目次
つくられた原子力神話
国策PR
事業仕分けの思想
道路とNPO
五輪招致という虚妄
仕組まれる選挙
捕鯨国ニッポンの登場
著者等紹介
斎藤貴男[サイトウタカオ]
ジャーナリスト。1958年生まれ。早稲田大学商学部卒業。英国バーミンガム大学修士(国際学MA)。新聞記者、週刊誌記者を経てフリーに(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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