またの名をグレイス 〈下〉

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  • サイズ B6判/ページ数 355p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000248068
  • NDC分類 933
  • Cコード C0097

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

藤月はな(灯れ松明の火)

82
『哭声/コクソン』のように事実が提示されていてもそれを捉える人がどう、解釈し、信じるかで変わってくる。でも彼女は「女」で「人間」なだけなのだ。降霊術でグレイスが語った事は本音を押し殺すしかなかった女性たちの声かもしれない。しかし、それが事実であるかは分からない。グレイスの語りが続くにつれて宿泊先でのサイモンの立場がグレイスの事件のパロディと化しているのに嗤う。そしてサイモンの相変わらずの虫の良さとジェイミーがグレイスの収監時代の事を話させて「自分なら助けられたのに・・・」と言い募るという語りに白けました2018/08/22

星落秋風五丈原

40
上巻ではアイルランド出身のグレイスが、母を失い酒飲みの父と家族から離れて住み込みで働き始めた経緯が、精神科医に語る形式で紹介された。下巻は遂に核心の事件当日に話が及ぶ。上巻でも皆が言うグレイス’は私ではありませんよ、と示唆する場面が度々登場するが、下巻においても周囲の見方との乖離を訴える文言が続く。2022/08/03

キムチ27

31
アトウッドが語る「史実に題材を得た小説の意義」・・主観の問い詰めが興味深い。ちなみに私は丸太小屋・カテドラル・ウインドウ・ドランカーズバスが好き)この時代2世紀前となると近世。心霊主義や霊媒・交信術が信じられていた。一つの真実すら突き詰める手法が今日とは大きく異なる。当小説は精神科医ジョーダンが殺人犯グレイスに語らせる形式を取っているが彼は精神病と記憶喪失を専門とする設定で「アトウッドが創作した」人物。、物事の不確実性を今の時代の我々が耳を傾け現代が分析する巧みな小説だ。2014/08/31

紅はこべ

27
アメリカ人の若き精神科医がグレイスに面談し、悲劇に至るまでの過程を語らせる。グレイスは精神を病んでいるのか、身の上話はどこまで真実か。人生の迷宮に踏み迷う心地がする。19世紀カナダの使用人階級の視点からの風俗や生活様式がよく伝わった。『五輪の薔薇』が好きな人にはお勧めかも。2008/10/22

空猫

25
アトウッド初読み。1843年に実際に起きた殺人事件を基に、共犯か心神喪失かの調査と、当時の庶民の慣習、社会背景、心理学(催眠療法)などを描写しつつ、ほぼ独白と手紙のやり取りだけで創作された物語。フェミニズム作品とも(女は愚かで男を惑わすものだと)。 結局真実は闇のままだがこの本は解明でなく、あなたはどう思うか、何を感じたか、を問う、静かに、けれど強烈に突きつける作品だと思う。 これでプリズンブッククラブの課題図書はほぼ読めた。2021/05/01

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