内容説明
家畜の誕生は紀元前七〇〇〇年ごろの西アジア、羊・山羊が最も早いとされる。では、いかにして家畜化は始まり、その管理技法は展開したのか―。著者は、永年にわたり西アジア・地中海地方を訪れ、牧畜の現場をつぶさに観察、その知見に基づき家畜化の過程を鮮やかに再構成する。本書は、著者の家畜化論の集大成である。
目次
1 はじめに
2 主題とアプローチ
3 家畜化の開始はいかにして進行したか
4 家畜化の開始以後―初期牧蓄段階での技法的展開
5 搾乳による乳利用はいかにして開始されたか―牧畜の二次的展開
6 去勢雄誘導羊とその周辺―群れ誘導技法の展開のもとで
7 おわりに
著者等紹介
谷泰[タニユタカ]
1934年福岡県生まれ。西洋史、文化人類学。京都大学文学部史学科卒業、同大学院文学研究科西洋史学専攻博士課程中退。京都大学人文科学研究所社会人類学部門教授・国立民族学博物館教授(併任)、京都大学人文科学研究所所長を経て、京都大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
前田浩史
0
家畜化のプロセス、搾乳の開始なども重要な議論だが、「牧民」が家畜化のプロセスで獲得した思考や行動の様式が、 その後、キリスト教⇒社会管理などの文化にまで援用され発展するといった考え方は、本当にスリリングで、いまさらのことだが、文化研究のダイナミズムを感じた。 2017/06/05
MIRACLE
0
西アジアでのヒツジ・ヤギの放牧的牧畜の成立について、家畜の過程(Ⅲ)と、家畜管理の技術の展開(間引き・新生子の介助・搾乳[Ⅳ]、去勢雄誘導羊[Ⅴ])について、動物考古学と野外観察の資料から、再構成を試みた本。本書中の去勢雄誘導羊と宦官との関連については、機能的類似よりも、切除という身体的類似から論じた方がよい。筆者の言及はないが、西アジアの牧畜は重要なテーマだ。なぜなら、西アジアでは牧畜をとおして、人間が動物を絶対支配するという価値観とともに、人間家畜(=奴隷)という存在が生まれているからである。2015/09/19