出版社内容情報
20世紀前半を代表する大指揮者ヴィルヘルム・フルトヴェングラー.彼を生んだフルトヴェングラー家の人々は,古典的教養を獲得した自由な市民であり,ゲーテとシラーを理想とする「ドイツ教養主義」を体現していた.五世代二百年に亘る家族の人々とその時代を描きつつ,「市
内容説明
ヴィルヘルム・フルトヴェングラー(一八八六‐一九五四)は、二〇世紀前半を代表する指揮者として、現在でもなお高い人気を誇る。しかし一方で、彼はナチス政権獲得から第二次世界大戦後まで、「政治と芸術」の関係に翻弄される運命を受け入れざるを得なかった。本書は、指揮者の父で著名な考古学者であるアドルフをはじめ、フルトヴェングラー家の人々の多くが、古典的教養を獲得した自由な市民であり、ゲーテとシラーによって構想された「ドイツ教養主義」を体現しようとした点に着目する。そして、カリスマ的指揮者フルトヴェングラーを生んだドイツ教養主義の展開と、その背景となった「市民社会」が、二度の世界大戦によって衰退から滅亡にいたる道筋をたどる、野心的著作である。
目次
第1章 「感情の揺れる階梯の上で」―失われた美を求める神経質な学者
第2章 「耳を聾する轟音から誇らしげに遠ざかって」―生の索漠たる岸辺に立つ若き市民たちの悩み
第3章 「音楽こそ祖国」―ドイツ的教養の聖なる芸術
第4章 「彼の芸術からは常に無限の幸福感を生む音が流れ出てくるだろう」―人間を捉える指揮者にして、聴衆のいない作曲家
第5章 「私を招き、私に憧れ、引く手あまたの私」―芸術の力の大規模な産業化
第6章 「フィルハーモニーの響きは自然の産物」―ウィーンの柔らかな音と北ドイツ的な音色
第7章 「我々芸術家は政治に関与すべからず」―権力者に接近はするが、心の内では留保
第8章 「協力を楯に抵抗」―市民的なジレンマ、権力なしでは人の言うなりだ
第9章 「美も死なねばならない」―すべてイメージ化された商品世界における教養市民の絶望
著者等紹介
シュトラウプ,エバーハルト[シュトラウプ,エバーハルト][Straub,Eberhard]
1940年生まれ。歴史学、芸術史、考古学を学び、大学教授資格取得(歴史学)。「フランクフルター・アルゲマイネ」紙の学芸欄担当を経て、現在はフリーランスのジャーナリスト。ベルリン在住
岩淵達治[イワブチタツジ]
1927年生まれ。東京大学文学部独文科卒業。学習院大学名誉教授。演出家。ドイツ文学
藤倉孚子[フジクラノブコ]
東北大学文学部独文科卒業。翻訳家
岩井智子[イワイトモコ]
早稲田大学大学院修士課程修了(独文学専攻)。国立音楽大学非常勤講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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