内容説明
19世紀末から戦後へ、イスラエル建国をはさむ世界史的な激動を生きた思想家ブーバーとショーレム。交錯する二人の軌跡には宗教と政治の、あるいはナショナリズムと普遍精神の葛藤が色濃く映し出されている。さらに20世紀末の歴史家論争を契機とするショーレム超克の動向―生存を賭けた思想闘争のダイナミックスに、凝縮された今日の課題を読む。
目次
第1章 東方ユダヤ神秘主義と西欧
第2章 ブーバーの神秘主義
第3章 ユダヤ教神秘主義とグノーシス主義
第4章 ショーレムのカバラ論総論
第5章 ショーレムのメシアニズム―シャブタイ主義
第6章 ショーレム以後のユダヤ学
第7章 アーレントとショーレム
第8章 ポスト・シオニズムと歴史家論争
著者等紹介
上山安敏[ウエヤマヤストシ]
1925年生まれ。専攻、西洋法制史・法哲学。1949年11月、シベリアより復員帰国。1953年、京都大学法学部卒業。現在、京都大学名誉教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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Bevel
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あまり紹介されていない、90年代以降のショーレム批判を概説する記述のあるありがたい本。そろそろ米寿に近づく定年後の教授が書いたと思えないほど、新しい研究が取り上げられていて、びっくりした。ショーレムの本当にすごいところは、安易な思想的純化を許さず、混淆と、それによる緊張を徹底的に引き受け、ショアーを経験した世代の中で可能な限り最良の「政治」の一つを行ったってところ。それに対してアブーラーフィアの読みを軸にポスト・ブーバー的手法で対抗するモーシェ・イデルがすごい気になる。2010/04/06