出版社内容情報
村上春樹に村上龍,吉本ばななに俵万智,みんな文壇村のアイドルだった-書評から作家論・ゴシップ記事に至るまで周辺の膨大な資料を渉猟し,一人の作家をアイドルに作りかえる時代の背景に果敢に切り込む.
内容説明
村上春樹に村上龍、吉本ばななに俵万智、みんな「文壇村」のアイドルだった―書評・作家論からゴシップ記事に至るまで周辺の膨大な資料を渉猟し、「一人の物書き」をアイドルにつくりかえる時代の背景に果敢に切り込む。林真理子、上野千鶴子、立花隆、田中康夫ら、総勢八名の豪華キャスト。渾身の同時代論。
目次
1 文学バブルの風景(村上春樹―ゲーム批評にあけくれて;俵万智―歌って踊れるJポエム;吉本ばなな―少女カルチャーの水脈)
2 オンナの時代の選択(林真理子―シンデレラガールの憂鬱;上野千鶴子―バイリンギャルの敵討ち)
3 知と教養のコンビニ化(立花隆―神話に化けたノンフィクション;村上龍―五分後のニュースショー;田中康夫―ブランドという名の思想)
著者等紹介
斎藤美奈子[サイトウミナコ]
1956年新潟市生まれ。成城大学経済学部卒業。文芸評論家
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感想・レビュー
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ヴェネツィア
431
80年代~90年代に文壇(並びに論壇)を一世風靡した作家(論客)たちを俎上に乗せて、彼ら彼女らがいかにその時代に迎えられたのかといった同時代評を手掛かりに、バッタバッタと切っていった本。ある意味では痛快である。また、論者(斎藤美奈子)の冴えも感じさせる。まず、やり玉に挙がったのが村上春樹。返す刀で寸断されるのが俵万智。いずれも、ごもっともと言えばごもっとも。あの上野千鶴子もフェミニズムをダシにした「成功者」「転向者」「商売人」「オヤジ転がし」「ジジイ殺し」のイメージともう散々。おお怖!2020/06/08
メタボン
31
☆★ 「他人のふんどしで相撲を取る」批評家のいやらしい部分が鼻に突いた。そこには作家に対する敬意のようなものも感じられないし、鋭い読みもない。ただ他人の労作のエッセンスを掬い取ってきて「見て見て、私こんなことにも気づけるのよ」とあざとくひけらかすだけだ。こんな感想になってしまったのも、この書の論調が憑依したのかもしれない。2016/03/17
スノーマン
26
吉本ばななと林真理子に関するものが面白かった。流行った時代の背景や、新たな文壇アイドルにうろたえるおじさんたちの評論をエイエイと斬っているのが楽しいな。ただ、田中康夫には全く興味がなく飛ばしてしまった(笑)すみません。2014/06/06
くみこ
23
再読でも面白い。たまたま同じ名字の村上春樹と村上龍、両村上比較論が後を絶たないものの、村上龍は田中康夫と比べられても良かった、などは忘れてました。「林真理子スゴロク」のアガリは、この本が書かれた時点では結婚でした。世間に叩かれ続けた林真理子さんは、今や日本文藝家協会理事長だと思うと、感慨深いものがあります。「日本の同時代小説」も読んでみようと思います。2020/06/22
梟木(きょうぼく)
18
80年代高度成長期の日本を背景に台頭した文壇アイドルたちを「現象」学的に考察した、面白いが狡くもある一冊。これまでさんざん論じ尽くされてきた両村上はともかく林真理子や上野千鶴子、立花隆や田中康夫など正面きって作品が論じられること自体珍しい作家も多く、独自の着眼点もあってどの章も楽しめた。ただ狡いのは、この本が基本的に著者の「後出しジャンケン」によって成立しているということ。同時代に書かれた批評や論争の的外れを笑うことは簡単だ。しかし私たちは、例えば村上春樹をあの頃より適切に「読めて」いるのか、どうか。2014/10/27