出版社内容情報
幸徳秋水らが処刑された,近代日本最大の思想弾圧「大逆事件」.その真実を明らかにすべく,戦後,再審請求を立ち上げた弁護士・森長英三郎.遺族らを訪ね,抹殺された犠牲者の人間性の回復に心血を注いだ生き様は何を物語るのか.「宴のあと」裁判でプライバシー権を確立するなど,人間のための司法を求め闘った弁護士の生涯を追う.
内容説明
幸徳秋水、管野須賀子ら一二名が処刑された、近代日本最大の国家権力犯罪「大逆事件」。その真実を明らかにすべく、戦後、再審請求の主任弁護人となった弁護士・森長英三郎(一九〇六‐八三)。抹殺された犠牲者を記録し、近現代史の書き換えに心血を注いだ生き様は何を物語るのか。戦前から引き継がれる司法の「暗部」を問い続けた弁護士の「生と死」を鮮やかに描く。丹念な取材で「大逆事件」の実相に迫る第四作。
目次
第1章 前夜の回廊
第2章 縅黙せず
第3章 自由主義
第4章 風霜五十余年遥か
第5章 百年の余韻
著者等紹介
田中伸尚[タナカノブマサ]
ノンフィクション作家。『ドキュメント憲法を獲得する人びと』(岩波書店)で第8回平和・協同ジャーナリスト基金賞。明治の大逆事件から100年後の遺族らを追ったノンフィクション『大逆事件―死と生の群像』(岩波書店、のちに岩波現代文庫)で第59回日本エッセイスト・クラブ賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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小鈴
19
明治末期の大逆事件で無期減刑で死刑を免れた12人のうち4名が1947年に生きていた。彼らの復権と無罪を求めた再審請求事件に関わったのが弁護士・森長英三郎だ。「自伝お断り」の森長だが、大逆事件関係者、再審請求の判決が確定したのちもすべての遺族の墓参をライフワークにして、関係者のその後を記録している。ヨハネの聖句のタイトルのように、森長のおかげで記録されず消えかかった彼らの姿が今の私たちに伝わるのだ。大逆事件をライフワークとした著者にとっても万感の思いを込めたタイトルだろう。2020/07/08
たつや
4
タイトルに惹かれて、図書館で借りましたが、大逆事件自体を知らなかった自分は、明治天皇暗殺事件で逮捕された彼らが冤罪である可能性に唸ってしまった。その後、墓参りも欠かさない弁護士、森長英三郎の人生に感動した。没後、墓石に森長家の墓とあるべき家の一文字のない墓石が物悲しい。2024/07/01