内容説明
国民主義や植民地主義の思想はいかにして克服可能か。長年この難題と格闘してきた著者による待望の新著。過去の植民地支配・戦争犯罪を直視せず、アメリカの「下請けの帝国」の地位にしがみつく戦後「日本」。その精神構造を、恥、男性性、人種主義など、様々なファクターから解明する。世界に蔓延する自国第一主義を批判的に超えるための必読書。
目次
第1章 “ふれあい”の政治
第2章 歴史と責任―昭和史論争について
第3章 「あなた方アジア人」―西洋/アジアの二項対立の歴史的役割について
第4章 フーコーの声を反響させつつ外人の群衆によびかけること
第5章 パックス・アメリカーナの終焉とひきこもりの国民主義―西川長夫の“新”植民地主義論をめぐって
第6章 「無責任の体系」三たび
著者等紹介
酒井直樹[サカイナオキ]
1946年生まれ。シカゴ大学で博士号を取得。コーネル大学人文学部教授。専門は日本思想史、思想史、翻訳理論、国民主義研究(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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zikisuzuki
3
ひきこもりという個人的な行動を社会的な思想の潮流と結び付けて、その根底に日本人に深くはいりこんでいる植民地主義が見え隠れしていると。まぁ、確かに過去の日本人は西洋に羨望して御仲間に入れてもらおうと必死だったし、最近の日本人は朝鮮半島や中国をバカにし敵視することで自我をたもっている人はまま見かける。植民地主義とは嘗て支配した記憶を下らない失敗と総括できないことだと。そんなことはこんなに沢山の論文にしなくても分かっている人がほとんどで、残念ながら彼らは聴く耳をもたない。だって、確かにひきこもっているから。2018/03/17
原玉幸子
2
「ふれあい」を引き合いに哲学的に始まり、植民地主義からグローバリゼーション、人種主義、やや昔の左翼の様に語る戦争責任と米国による日本の傀儡政治体制、マスコミ批判、そして一寸難しいフーコーと、所謂社会人の一般教養が試される、知の総合格闘技的な論説です(皆、戦え!)。カズオ・イシグロ『日の名残り』からパックス・アメリカーナを抽出するところは、ほほぉっと感心しました(ここは文学!)。(◎2019年・春)2020/04/03
Naoya Sugitani
2
酒井直樹氏の最新の著書。今まで発表してきた論文をまとめたものとなっている。何といっても、内容的に充実しているのは本の題名にもなっている「ひきこもりの国民主義」だろう。日本の戦争責任への向き合い方や、日米関係を厳しく、かつ、的確に批判している。昨今、対米従属を批判する研究や著作が増える一方で、国際政治学者や外交史研究者による戦後日米関係の見直しもかなり進んでいるようだが、どちらの側にしても、酒井氏ほどに思想史的側面にまで入り込んで論述出来ている研究は少ないだろう。稀有な一冊だと言える。2018/06/20