内容説明
マンハッタンに住む四十代の夫婦ピーターとレベッカ。ある日、ドラッグ中毒者である妻の弟ミジーとの同居が始まり、若さと愚かさの放つ強烈な輝きにピーターは憑りつかれてしまう。色褪せ始める夫婦の「そこそこの幸せ」。人生に夜の帳がおりようとする時、彼がとった選択とは?美と幻滅、倦怠と幸福をめぐる珠玉のストーリー。
著者等紹介
カニンガム,マイケル[カニンガム,マイケル] [Cunningham,Michael]
1952年オハイオ州、シンシナティ生まれ。1988年、アイオワ大学在籍中に発表した短編小説“White Angel”が高い評価を得て翌年の『アメリカ短編小説傑作選』に収録。1999年、『めぐりあう時間たち』(原著1998年、邦訳:集英社、2003年)でピューリッツァー賞およびペン/フォークナー賞を受賞
馬籠清子[マゴメキヨコ]
筑波大学大学院人文社会科学研究科現代語・現代文化専攻。准教授。専門は学際研究(文学・音楽)、アメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
藤月はな(灯れ松明の火)
69
ピーターとレベッカの夫婦はインテリで仲がよく、養子も独立し、満ち足りた生活を送っていた。しかし、ピーターはレベッカの弟でドラッグ中毒のイーサンことミジーの瑞々しい若さを放つ裸を見てから恋に落ちてしまう。過ぎ去ってしまった自分の若さや無謀さ、有り得たかもしれない別の人生への可能性に対する懐かしさも込めたミジーヘの恋慕に養子の静かな過去の行いへの糾弾に戸惑ったり、レベッカの愛や優しさが色褪せて見える描写が残酷にも美しかったです。そしてレベッカの心理描写がないと思っていたらまさかの・・・でも納得いくラストでした2015/06/16
くさてる
10
40代のアートディレクターが、妻の弟と同居することになることから始まる物語。いわゆる「中年の危機」のお話なのかな?真剣に夫婦の関係性を考えるも良し、思わぬ恋に振り回される中年男の葛藤を喜劇としてみるも良し。個人的には、芸術を仕事とするアートディレクターの生活がどういうものなのかが垣間見られて面白かったです。2015/01/09
akk
3
アートディーラーの生活がこういうものだとわかって面白かった。ミジーはピーターよりずいぶん上手だったということだ。「ベニスに死す」のビョルン・アンドレセンに通じるものがあるというので久々に画像検索してみて懐かしかった。2014/07/08
hagen
1
美術品ブローカーを生業としていて仕事に対してはその観察眼をもってして同僚や同業者からも一目置かれる存在である。が、しかし、家庭内に置いては妻の絶えず心配の種になっている弟の性的魅力に恋いこがれ、一人娘からは完全にシャットアウトされるという内心穏やかならぬ引き裂かれる様な思いにズタズタにされながらも、デリケートな感性のまま生きる愛すべき変態中年男の話。作品の底流にある多岐にわたる音楽、文学、芸術に関するモチーフが下支えになる事で話がより強固なものになる。腹を抱えて笑う中に何とも言えない哀感が漂う。 2018/06/15
GO-FEET
0
★★★★2014/05/12