出版社内容情報
嘘、偽り、詐欺、謀略……。秩序や倫理をもって排除しようとしても、決して人間世界から排除しきれない「狡智」という知のあり方。この厄介な知性は人類の歴史の中でどのように生まれ、どのように意味づけされ、社会の中に組み込まれてきたのだろうか。古今東西の史実や物語を素材に、狡智の深層と人間の本性との関わりについて考える。
内容説明
嘘、偽り、詐欺、謀略…。秩序や倫理をもって排除しようとしても、決して人間世界から排除しきれない「狡智」という知のあり方。この厄介な知性は人類の歴史の中でどのように生まれ、どのように意味づけされ、社会の中に組み込まれてきたのだろうか。古今東西の史実や物語を素材に、狡智の深層と人間の本性との関わりについて考える。
目次
序章 フィクションの中の詐欺師たち
第1章 日本人の狡智観
第2章 馬喰八十八の智恵
第3章 狡智と致富
第4章 中国における狡智の哲学
第5章 ギリシャ人と狡智
第6章 生きるための狡智
終章 騙しの起源と動物行動
著者等紹介
山本幸司[ヤマモトコウジ]
1946年生。慶應義塾大学大学院経済史専攻修士課程修了。出版社勤務を経て、中央大学大学院国史学専攻博士課程単位取得。神奈川大学短期大学部・同大学院歴史民俗資料学研究科教授を経て、静岡文化芸術大学文化政策学部教授。専門は日本中世法制史・思想史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
10
狡智には悪い意味もだが、臨機応変に智恵が回る、機転が利くといういい意味もあるとは知らなかった(1頁)。ヘーゲルを想起する狡知。子どもが嘘をつくのは智恵のついた証拠(29頁)。頭がいい人は、嘘を上手について騙してもバレないが、嵩じていけば、違法だと逮捕される。やり過ぎは禁物。倶利伽羅峠の戦いでは、義仲が夜中になって、平家を後ろの山から搦(からめ)手と追手が呼号し、南の谷に追い落とそうとしていた謀があったとは(40頁)。目には目を歯には歯をだけでは一進一退だが勝てはしない。「二人のコンパードレ」貧→富の騙し。2013/09/20
らむだ
1
騙しのなかの狡智に的を絞っている。 序章では映画や小説の中の詐欺師を入口に、その後も日本の中世武士、やまと心、馬喰八十八とその類話。中国哲学における狡知の扱い。ギリシャ神話における狡知。動物における狡知。と続けて狡知、騙すことの実例とその受け取られ方を列挙した一冊。2021/10/31
koji
1
武士の機知(狡知)、馬喰八十吉、やまと心の解釈(日本人子湯の知恵、才覚)を知って、日本人の道徳観がそれほど歴史が古いものではないことを知りました。また中国の道徳観も相対的で柔軟であり、儒教、老子、荘子、墨家、荀子、韓非子氏、孫子の兵法と内輪でずいぶん揉めています。結局、狡さとか騙しは、二重の基準(内には道徳的で外には狡知という使い分け)があることを知ったのが収穫でした。2012/06/03
shimojik
1
商業と狡知は普遍的に結びつく/メーティス的知性:勘、柔軟性、知恵、先見、精妙、欺計、創意、警戒心、楽観、多様なスキル、長年の経験の混ざり合ったもの。それは変わりやすい曖昧な状況に適用される/狡知は原理化・体系化が難しく、道徳性に相反するため、政治・外交・戦争・商業の領域以外では排斥されがち/人間の生き延びる力を肯定し、どんな道徳も無視して生きつづけることの称揚/即興的な日常での結果の積み重ね/世界を変えることなく受容し、その広大さ多様さに合わせて自己を作り変える2012/04/13
メルセ・ひすい
1
「狡智」という知性は、人類の歴史の中でどのように生まれ、どのように意味づけされ、社会の中に組み込まれてきたのか。古今東西の史実や物語を素材に、狡智の深層と人間の本性との関わりについて考える。2012/04/03