敗者たちの想像力―脚本家山田太一

  • ただいまウェブストアではご注文を受け付けておりません。
  • サイズ B6判/ページ数 232p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000244671
  • NDC分類 912.7
  • Cコード C0036

出版社内容情報

『ふぞろいの林檎たち』『岸辺のアルバム』『男たちの旅路』『想い出づくり』…….脚本家・山田太一のテレビドラマ作品は,日本社会に何を問うているのか.誰もが「負ける」ことや「失敗する」ことを極度に恐れているように見える現在,「敗者」の視点や想像力に着目し,「負ける」ということの意味を映像分析を通して考える.

内容説明

『男たちの旅路』『岸辺のアルバム』『想い出づくり。』『早春スケッチブック』…。浪人生、障害者、四流大学生、高卒のOL、老人等、社会的な敗者たちが不自然なリズムで対話を重ねる山田太一のテレビドラマ作品は、一九七〇年代以降の日本社会に何を問うてきたのだろうか。誰もが、負けること、失敗することを極度に恐れているようにみえるいま、山田作品を通して「負ける」ことの意味を考え直し、「敗者」の視点や想像力の可能性を描き出す。

目次

第1部 敗者たちのドラマ(遅刻者が書く山田太一論;「敗者」としてのテレビ脚本家;『岸辺のアルバム』―劣等感を生きる若者たち;『男たちの旅路』―「敗者」としての戦後日本)
第2部 後衛的作家としての山田太一(「敗者」のメタ不条理劇;前衛劇の後を描くドラマ―寺山修司と山田太一;『早春スケッチブック』―「敗者」の逆転劇;不機嫌なドラマ―「シラケの時代」のテレビドラマ;『それぞれの秋』―後衛のヌーヴェル・ヴァーグと内気な青年)
第3部 ポストモダン社会とテレビドラマ(『輝きたいの』―私生活とテレビの輝き;テレビドラマと消費社会;『思い出づくり。』―キャラが立つこととリアリズム;『シャツの店』―鶴田浩二というキャラクター;ドラマにおける一般性と固有性―大型ドラマの時代と山田太一)
第4部 テレビメディアという神秘―怪異譚の可能性(キツネに化かされる話;『日本の面影』―敗者の思想としての怪異譚;『異人たちとの夏』―優しい幽霊たち;孤独な声のコミュニケーション;『本当と嘘とテキーラ』―テレビに化かされる話)
第5部 終わった後からドラマが始まる(『終りに見た街』―戦時下を生き直すメタ・ドラマ;終わった後からドラマが始まる;『3人家族』―悔やむ恋愛劇;『墓場の島』―アイドル引退宣言のドラマ;敗者の想像力)

著者等紹介

長谷正人[ハセマサト]
1959年生まれ。早稲田大学文学学術院教授。映像文化論、文化社会学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

この商品が入っている本棚

1 ~ 1件/全1件

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

もりくに

58
昨年11月に亡くなった山田太一さんのテレビドラマは、「3人家族」(68年)から代表的な作品は、ほとんどリアルタイムで見ていた。初期の連続ドラマは、ビデオもなかった時代だったので大変だったが、一週間が待ち遠しかった。今でも時々再放送されると、古いとは感じず、相変わらず引き込まれてしまう。初めは不自然に聞こえる「せりふ回し」も、快いリズムとなる。単に「面白い」ではない何かがモヤモヤしていた時に、この本に出合った。70~80年代の作品群を、「敗者」をキーワードに分析し、そこに日本社会の別の可能性を探った本。→ 2024/03/11

おさむ

30
山田太一さんの長年のファンです。彼のドラマの本質を見事に言い当てた良書です。それは「敗者の思想」。誰もが成功者になれる訳ではない。なのに、頑張れば夢は叶うと言い続けると、多くの人間が挫折感を抱えて病んでしまう。それよりも前向きに生きる為には可能性を断念して生きていく事を説くことの方が大切だという。人は敗退から学び、無力である事を認めることが本当の強さ。敗者である事を認めた時、自分がこれまで他人から受けていた優しさという負債に気づき、別の誰かに返済しようと考える。改めて山田脚本の奥深さを知らされました。2021/01/17

壱萬参仟縁

23
自らが敗者であることを 認めた者だけが、本当に強い 人間になれる(44頁)。 弱さを認めれば、 強さに転じることができる。 これは、逆境をばねにする という謂いに似ている。 ベクトルを反転させることになる。 個人以外に、 国家なら、本当の強さは弱さを認め、 戦争放棄が正しい道なのだ。 山田太一の作品から何が見えるか、 読者は想像力をもって対峙 せねばならない。 わたしは学部時代、20年前であるが、 学校という映画を拝見した。 夜間高校に通う多様な社会人生徒。 2014/06/15

kochanosuke

12
山田太一の熱烈ファンですが、反感を覚えることなく(笑)、とても良かった。山田さんの作品群を論じるにふさわしい書き手さんと思います。作家論ではなく少し違う狙いをもって書かれていますが、作品論ではあります。今年のベスト候補。ザ・装丁というような表紙デザインもいい。2012/11/13

かず

2
長谷正人氏の最高傑作。すぐれた作家論であるとともに、すぐれた70,80年代日本社会論、日本映画論、テレビ論、メディア論となっている。作品の小さい部分を論じつつ、非常に全体論的なところに議論を持っていく技量がすばらしい。2012/08/01

外部のウェブサイトに移動します

よろしければ下記URLをクリックしてください。

https://bookmeter.com/books/5180357
  • ご注意事項

最近チェックした商品