出版社内容情報
忘れられた古層から掘り出された過去の断片が豊かな思想へと変貌し、それが現代を把握し批判する最高の手だてとなるー。ハンナ・アレントは、この確信に基づいて独自の政治理論を追求した。その全貌を描いた労作。
内容説明
忘れられた古層から掘り出された過去の断片が豊かな思想へと変貌し、それが現代を把握し批判する最高の手だてとなる―アレントはこの確信に基づいて“人間の条件”を探り、政治とは何かを追求した。既存のカテゴリーに収まることを拒む彼女の政治理論の核心に迫る労作「ハンナ・アレントの政治思想」に加えて、アレント政治理論への格好の水先案内「アレントを導入する」を収録する。
目次
ハンナ・アレントの政治思想―哲学・人間学・政治理論
第1章 活動的生活と精神の生活(活動的生活;精神の生活)
第2章 「世界」と人間(知覚と世界;人工物の世界;世界と「公的なるもの」)
第3章 政治の概念(「公的」・「私的」・「社会的」;自由と活動としての政治;権力と機構;権威と伝統;判断力の役割)
付録 アレントを導入する
著者等紹介
川崎修[カワサキオサム]
1958年生まれ。東京大学法学部卒業。現在、立教大学法学部教授。専攻は政治学・政治学史(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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ルンブマ
3
カントの『判断力批判』では、崇高とは人間の判断力を超えるもの、美は我々の判断力の中で生成されるものとされたが、アーレントによって再検討されたカントの判断力論においては、判断力と公共性とが深く結びついていることが指摘されている。「判断を行う者は、常にある共同体のメンバーとして判断を行うのである」とある通り、判断力は公共空間がなければ存在し得ず、故に美は人間関係の中でしか存在し得ない。崇高は我々の能力を超えているものであるため、誰もが自分勝手に到達することができるが、美は我々の関係性の中でしか生まれないのだ。2021/01/05
rymuka
2
p.178~179からの引用。約束によって規則が作られ,人間の行うことがある範囲で予測可能になっては,活動は,消滅はしないまでも,ある程度「行動」化されてしまうのではないか。~http://rymuka.blog136.fc2.com/blog-entry-28.html2012/05/27
メルセ・ひすい
2
13-73 赤19 「代表民主制」の危機? 米国の象徴は強欲? アメリカの繁栄?が真の自由の精神を失わせたている。★繁栄と大衆社会は政治領域全体を荒廃へと脅かし、その荒廃において復讐をとげているのは、なお、ヨーロッパの貧困だ。貧しい人々の隠された願望は「各人は必要ニーズに応じて」ではなく「各人は欲望に応じて」である。そして、必要が満たされている人々にのみ自由は到来するというのが真実なら、自分の欲望のために生きることに専心している人々には自由は来ないというのも同様に真実である。 拝 2010/05/06
ア
0
再読。改めて川崎先生のすごさを実感。アレント(そして20世紀以降の思想全体)の「大きな問題」がわかりやすく論じられている。示されたいくつかの難問を意識しつつ、著作を読んでいかなければいけないと思う。川崎先生の初期の著作であるためか、アレントの時代的変化への配慮は緩い感じがした。2017/04/08
Stemonitis m.(すてもに)
0
アレントが持ち出す諸概念は普通に読めば分かるのだが、それらの概念が彼女の議論のなかで、どのように展開されていくかを読み解くのは難しいと感じていた。この論集の優れているところは、この、「それで、どうなるの?」という部分を整理して解釈と評価を与えている所だと思う。もっとも、彼女の文章の魅力は、あの回りくどい言い回しにあるとも言えるが。2012/09/20