バン・マリーへの手紙

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  • サイズ B6判/ページ数 249p/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000244367
  • NDC分類 914.6
  • Cコード C0095

出版社内容情報

「バン・マリ(ー)」(bain-marie)とはフランス語で「湯煎」のこと。直接火にかけないことで逆に奥深くまで火を通しうることの調理法にならって、彼方に過ぎ去った淡い思い出や、浮いては沈む想念を、湯煎にかけるようにゆっくりと、細密かつやわらかな筆捌きでつづる最新エッセイ。フィクションとノンフィクションがにじみ合う、堀江文学のエッセンス。

内容説明

ユセンにしないと出てこない味なのよ、と先生は言うのであった。直接火にかけないことで逆に奥深くまで火を通しうる「湯煎」のようにゆっくりと、彼方に過ぎ去った思い出や、浮いては沈む想念をやわらかな筆捌きでつづる最新散文集。

目次

牛乳は噛んで飲むものである
五千年後の健康飲料
火事と沈黙
最小の三分の一を排棄すること
煉瓦工場の退屈
運河について
束ねた柱
ペンキ屋さんには氣がつかなかつた
悪魔のトリル
落下物について
ふたりのプイヨン
崩れを押しとどめること
キリンの首に櫛を当てる
挟むための剣術
ニューファンドランド島へ!
魔女のことば
ふたりの聖者
愛の渇きについて
十三日の金曜日ふたたび
月が出ていた
飛ばないで飛ぶために
うっそりと
声なき猫の託宣
回転木馬の消滅
ブラック・インパルスのゆくえ

著者等紹介

堀江敏幸[ホリエトシユキ]
1964年、岐阜県生まれ。作家、仏文学者。『おぱらばん』(青土社、1998)で三島由紀夫賞を、『熊の敷石』(講談社、2001)で芥川龍之介賞を、「スタンス・ドット」(新潮社、2003)で川端康成文学賞を、『雪沼とその周辺』(新潮社、2003)で谷崎潤一郎賞と木山捷平文学賞を、『河岸忘日抄』(新潮社、2005)で読売文学賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ヴェネツィア

149
本書は、2004年に「図書」に連載されていたエッセイをまとめたもの。初出誌の性格からも、本にまつわる話題、また著者の経歴(それを買われて連載することになったのだろうし)からはフランス(言葉であったり、文学であったり、社会であったり)に纏わるものが多い。読む人によって興味を魅かれるテーマには差がありそうだ。私は音楽を巡る「悪魔のトリル」、あるいは博物学的な「キリンの首に櫛を当てる」が面白かった。日本でも、江戸時代に象やラクダなどが江戸の街にやって来て、大人気を博したようだ。なお、小説の発想とは違うと実感。2014/10/09

コットン

62
kashihaさんのおすすめで25の短編からなる本。作家ではあるけれど、小説家と紹介されると違和感があると言われる堀江さんの文は自身が書かれる手法として、先が分かっていたら面白くなく、書くことを楽しみたいと言われ、読むたびに、ゆったりしたワクワク感に充ち溢れている。例えば『煉瓦工場の退屈』:「景色が風景になったとき、それは乾いた地肌を見せる粘土質の山や灌木の繁み、煉瓦干しの棚や窯のうえの煙突といった事象から具体性をひきはがして、こちらの創造力との関係性のなかでしか生まれえない架空の磁場になっている。」2018/02/26

27
タイトルに惹かれて手に取った、著者のエッセイ。バン・マリーとはフランス語で「湯煎」のこと。湯煎のようにちょうどいい温かさの25のエッセイが掲載されている。堀江敏幸さんの文章には、静謐なところがある気がする。小川洋子さんとの共著である『あとは切手を、一枚貼るだけ』ではそれが顕著にでていて、同じく静謐で繊細な文章を書く小川洋子さんと絶妙な掛け合いを見せていた。小説もエッセイも、その人の持つ文章の書き方は変わらないのだなと改めて感じた。★★★☆☆2024/04/23

踊る猫

27
本書に収められたエッセイのうちの一編を読み、意地悪な疑問が湧いた。堀江敏幸の「専門分野」とはなんだろう。フランス文学や日本文学の古典、であるようでしかしその領域だけに留まらない読書の幅の広さを感じさせる。だが、堀江を信用できるのは「専門分野」でもフェアネスと冷静さを貫くから。その本とのある種のフラットな接し方はそのまま堀江の日常の些事の身の施し方でもあり、心地よい「どっちつかず」(もちろん、褒めてます!)として結びつく。だが、あまりにもスマート過ぎてアクがない。今に限った話ではないが、この卒のなさは厄介だ2020/07/12

つーさま

10
タイトルにあるバン・マリーとは、直接火にかけないことで飲食物を調理し保温する<湯煎>のことを言い、堀江さんはこの言葉に複眼的で戦闘的な思考を見いだすが、こうした白黒はっきりしない中間的な場所を設けることは文学的な意味合いを通り越して、現実のあらゆるシチュエーションでも大切ではないか、というメッセージを著者は吸収しやすいよう湯煎することで微温状態にし、余熱を利用して読者の耳元でそっと溶かしていく。恍惚とでも表現すべき心地よさが始終読者を掴んで離さない。(続)2013/07/19

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