内容説明
ファシズム支配の終わりから六十年余、イタリアでいま、ムッソリーニ独裁を倒したレジスタンスの歴史的意義を公然と否定する言論が台頭している。だが、戦後イタリアの出発点となった反ファシズムの精神を歴史の記憶から抹消してしまってよいのか?歴史修正主義と政治修正主義の双方から放たれる反ファシズムへの批判にたいして、気鋭の歴史家が、政治・歴史・文化の諸分野にまたがって痛烈な反批判を展開。
目次
ポスト反ファシズム
ファシストたちの消滅
カレンダーの争奪戦
分断された記憶への賛美
「超党派的」歴史の批判
身分証明書
意識の激震
生における差異
犠牲者の記念碑化
現代史の授業
老年について
復活したクァルンクィズモと内戦の休戦
イタリアの女たち
レジスタンスの神話
ファシズムなきファシズム支配の二十年間
郷土派
反政治の復讐
「ソヴィエト的」憲法?
プレビッシート(人民投票)通り
ルイジアナの未開人
著者等紹介
ルッツァット,セルジョ[ルッツァット,セルジョ][Luzzatto,Sergio]
1963年生まれ。近現代史(フランス・イタリア)。トリーノ大学教授
堤康徳[ツツミヤスノリ]
1958年生まれ。イタリア文学。慶應義塾大学講師(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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unpyou
2
副題は「現代イタリアの修正主義」。終戦時の日伊の大きな違いは、イタリアは自らの手でムッソリーニを排撃し、ファシスト&ドイツ軍VSレジスタンスの20ヶ月の武装闘争により、諸都市をイタリア人自身の手で解放した反ファシズム神話にあるが、抵抗のリーダーが共産党であった事から、特に冷戦終結後の90年代より反ファシズム神話解体・相対化の動きが起こり、ネオファシストが政権に参加する事態さえ起きている。このようなイタリアでの歴史修正主義に対する歴史学者の批判的エッセイ。現地目線の書だが註が適切で難解さはなく、面白い。2014/03/08