内容説明
文楽の歴史に名を残す不世出の人形遣い吉田玉男。『忠臣蔵』の由良助や『菅原伝授』の菅丞相など、人形に深い内面やにじみ出る品格をもたらす技量は他の追随を許さず、八十歳を超えてもなお舞台に立ち続けた。その魅力の源泉に迫るため、長年にわたって行われてきた聞き取りの成果を集成した本書は、芸一筋の気迫に満ちた生涯を伝える。
目次
吉田玉男の芸と人
第1部 人形遣い七十三年
第2部 役と表現
吉田玉男最後の言葉
吉田玉男さんの思い出
玉男師弟関係図
著者等紹介
吉田玉男[ヨシダタマオ]
1919‐2006。大阪市生まれ。文楽人形遣い。1933年、吉田玉次郎に入門、玉男と名乗る。立役(男の役)のほとんどの役を遣い、合理的な役の解釈と深い内面表現で一時代を画した。77年、重要無形文化財保持者(人間国宝)認定。78年、紫綬褒章受章。2000年、文化功労者顕彰。他に主な受賞は第16回松尾芸能賞特別賞(95年)、96年度大阪文化祭賞金賞、第17回伝統文化ポーラ賞大賞(97年)、第19回京都賞(03年)など
宮辻政夫[ミヤツジマサオ]
毎日新聞大阪本社学芸部専門編集委員。伝統芸能、演劇を担当。芸術選奨文部科学大臣賞審査選考委員、芸術祭審査委員など歴任(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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fonfon
14
「役の気持ちを表現しようとしているが、自分はその気持ちにはなりません。人形遣いの気持ちと、人形を表現する気持ちとは別」という玉男の言葉を「座標軸に限りなく近づこうとするが決して交わらない双曲線のよう」と宮辻さんは解釈する。見事と思う。このことに対して、後半で玉三郎さんのコメントが掲載されているのも読みごたえがある。数冊読んだなかで、これが最も文体がしまっている。芸談もインタビューア次第で著しく違うものになってしまうものだ。最後の、楽屋でのやりとりには涙があふれ、玉男さんの至芸をもう直に観ることができない、2012/08/25
qbmnk
1
面白かった。生きているように人形を遣っていた初代吉田玉男さんの芸は、さまざまな工夫があって出来上がっていたことが分かった。先人の教えを基本にし、義太夫節に合わせて自在に人形を操ることができたのは、足遣いや左遣いを通した地道な努力の賜物であり、長年の勉強の成果が現在も弟子たちに引き継がれているのだと思った。口絵の楽屋での写真が素敵な笑顔で人柄が伝わってくる。2019/06/30
筋書屋虫六
1
何かの事情でガチの取材が出来なかったのかもしれないけれど、玉男さんの言葉を拾い集めてでも残したいという宮辻さんの執念が伝わってくる。そして、玉男さんの芸を映像でしか拝見できない後発のファンとしては有り難い。「ぼくは半兵衛(人形の役)の気持ちにはなってませんなあ。半兵衛の気持ちを表そうとしていますけど。」という珠玉の言葉を引きだした時「えー、ふふふ(と恥ずかしそうに笑い)」と入るのは、お二人の距離感が感じられてなんだかいい。イケイケの取材でもなく、俺の話を聞けでも無く、逆に玉男さんの人となりが伝わって来る。2018/07/10
みつひめ
1
晩年の玉男さんを拝見できなかったのが、悔やまれます・・・。2009/01/15
elduquec
0
断片的な一言、一言の積み重ね。 読んだ後に繋げなければならない。2017/04/25
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