出版社内容情報
90年前に南の島に漂着した山口百次郎,彼の誘いで移住した石山家.本書は山形出身の2家族を軸に日本人移民の苦難の歴史を壮大に紡ぎだす.後に日米両軍による凄惨なる戦場となるこの島で無告の民はいかなる悲劇に直面したか.海を越えた日本人は日本をいかに体現したか.瞠目の取材で忘れられた歴史を蘇らせた傑作.
■著者からのメッセージ
24年前,山形県天童市のご自宅で山崎さんに初めてお会いしたとき,山崎さんはこうおっしゃった.
「サイパンから引き揚げてきた人たちに,『取材』という形で行って話してくれることは,誰に対しても話せるようなことですよ.本当に思い出したくないこと,触れられたくないことは,何十年つきあって初めて打ち明けるという場合が多いものです」
山崎さんのこの言葉が,いまとなっては胸に重く響く.およそ6年をかけた取材とはいえ,私は「誰に対しても話せるようなこと」ではない話を引き出せたであろうか.
本書は,1987年に『海の果ての祖国』として時事通信社より出版された作品に,大幅な改稿を加えたものである.とりわけ第5章では,いまや跡形もないサイパン日本人町の目抜き通り商店街を,新たな取材を元に紙上で再現しようと試みた.プロローグとエピローグで取り上げた,サイパン島における「勝ち組」による「負け組」殺人事件についても,取材の結果を初めて詳述した.
振り返れば,このテーマは20代の私には,およそ手に余るものであった.ノンフィクションの書き手としてある程度の経験を積んだのちに,もう一度,書き直してみたいと思い続けてきた.
その念願がかない,こんなにうれしいことはない.
(「あとがき」より)
目次
プロローグ
第1章 漂 着
第2章 獣の島
第3章 南洋成金
第4章 南洋の東京
第5章 北ガラパン二丁目大通り
第6章 南村第一農場
第7章 海の生命線
第8章 軍 島
第9章 戦 禍
第10章 収容所
エピローグ
証言者及び取材協力者
主な参考文献・資料
あとがき
著者紹介
野村 進
ノンフィクション・ライター,拓殖大学国際開発学部教授.1956年生まれ,東京都出身.
アジア・太平洋,医療,人物論などをテーマに,旺盛な取材・執筆活動を展開.
『コリアン世界の旅』(講談社+文庫)で大宅壮一ノンフィクション賞と講談社ノンフィクション賞をダブル受賞.『アジア 新しい物語』(文春文庫)でアジア太平洋賞を受賞.
主著に『救急精神病棟』(講談社),『脳を知りたい!』『フィリピン新人民軍従軍記』『アジア定住』(いずれも講談社+文庫)などがある.
感想・レビュー
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さつき
松本直哉
むーむーさん
Toska
しもん