内容説明
これは宿命か―。実業家の道、天衣無縫の生、時の地層から掘り起こされ現れ出た人々の邂逅、それは、自分を宿命から解き放つ縁となるのか。樺太、アメリカ、ロシア、フランス、奄美―土地土地から呼び寄せられ辿った人生とは。ある財界人の自伝的小説。
著者等紹介
辻井喬[ツジイタカシ]
1927年生まれ。詩人・小説家。小説に『いつもと同じ春』(平林たい子文学賞)、『虹の岬』(谷崎潤一郎賞)、『風の生涯』(芸術選奨文部科学大臣賞)、『父の肖像』(野間文芸賞)など、詩集に『異邦人』(室生犀星詩人賞)、『群青、わが黙示』(高見順賞)、『鷲がいて』(読売文学賞詩歌俳句賞)など、著作多数。2006年日本藝術院賞恩賜賞受賞、日本藝術院会員(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yosssy
2
宿命。前世から定まっていて、避けることも変えることもできない運命。知らなければ、それに惑わされることもない。サハリンと奄美、島内源三郎と久藤幸子を近づけた花火は、鮮やかで美しかったことだろう。2014/10/05
でりら
0
やはり、ある程度老境に差し掛からないとこういった作品は書けないのかなと思う。勿論取材で書けてしまうこともあると思うが、同世代や或いは年下の世代が同じことを云ってもおそらくは素直に受け入れられない。男の身勝手も、理想も、ロマンも、ずっしりと身体にしみこんでくる。2010/02/28
あんこ
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親しいドクターに自伝の執筆を頼んだ財閥家の人生をめぐるお話。昭和の時代、政財界の細かい内容を、美しい日本語で描けるのは、自身も長年その世界に身を置いていた辻井氏にしかできない仕事だと思う。著者が高齢なこともあり、失礼だけれども、お元気なうちにもっともっとこういう作品を世に出してほしいと強く思う。2009/07/07
ナッキャン
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辻井喬(堤清二流通業の異端児であり先駆者)何処か興味を持つ作家。運命と孤独感、閃きの中に在る才能、メジャーな作家にはなれなかったけど、心に引っ掛る昭和的な文章は経済人としての顔に隠された運命に抗う自己主張と思う。この作品も島内源三郎を堤康二郎と清二と連想する主人公の宿命、運命は鏡面的で行間に彼の生い立ちが滲みでてるようで、彼もいつか第三者にこの言行録のようなもの作った欲しいと願ってるのではないか、09年の発刊から13年死去この作品と同じように自分の死を感じ、宿命を抗う事が出来たのか否か!彼を想ってしまう。2025/06/20