出版社内容情報
デリダは告発する--。ハイデガーの思考が、自分をそこから引き剥がそうとしていた、ナチズムとヒューマニズムに対して曖昧なままであることを。「人類」「国民」「家族」、さらには「性」とも訳せる複雑な「ゲシュレヒト」概念を手がかりに、ハイデガーと、そして哲学のナショナリズムと対決する思考の軌跡。
内容説明
「ゲシュレヒト」というドイツ語の下に、デリダは告発する。ハイデガーの思考が、なんとしても自分をそこから引き剥がそうとしていた、ナチズムとヒューマニズムに対して曖昧なままであったことを。人種、国民、人間性、さらには性とも翻訳される複雑なゲシュレヒト概念を手がかりに、デリダはハイデガーと、そして哲学のナショナリズムと対決する。一九八四‐八五年パリ社会科学高等研究院でのセミネールを通じて、慎重に忍耐強くテクストと向き合った知性の軌跡。
著者等紹介
デリダ,ジャック[デリダ,ジャック] [Derrida,Jacques]
1930‐2004。アルジェリア生まれ。フランスの哲学者、思想家
藤本一勇[フジモトカズイサ]
1966年生まれ。早稲田大学文学学術院文化構想学部教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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いとう・しんご
5
バルトに続いて懸案シリーズでデリダを読もうと、タイトルに惹かれて借りてきたら私が就職した頃に行われたハイデガーに関する講演の遺稿でした。内容は簡単ではない語れないけれど、デリダがハイデガーを精読しで析出するメシアニズムは、私には虚無的な終末待望のように思われました。2022/02/20
毒モナカジャンボ
0
「〜ではない」と言えば「〜ではないことになる」わけではないという訳でハイデガーがキリスト教的なもの、ナショナリズム的なものから逃れられていないということがネッチネチやられる。トラークル読解の読解だからだろうか、本文中に「ユダヤ」の文字が出てきたのはこれだけあって一回しかなかった気がする(プラトン-キリスト教的」はよく出てくる)。思索と詩作の協働がかつてドイツ以前のどこでやられたことがあったというか?といいつつこの講義(草稿)でデリダがやっていることはフランス語で思索と詩作の協働を考え抜く実践で小憎らしい。2022/07/20