出版社内容情報
東京・名古屋・大阪間を一時間でつなぐ「夢の超特急」リニア新幹線。いま用地から民家が立ち退き、残土を運ぶトラックは山間・市中を走り続けている。地方が大都市圏とつながる悲願は成就されるのか? ふるさとには何が残されるのか? 巨大事業の光と影に迫り、JCJ賞、新聞労連ジャーナリズム大賞を受賞した一連の報道を書籍化。
内容説明
犠牲と負担を伴う地域の理解は得られているか?情報公開は十分か?膨大に出る残土を安全に管理できるのか?大量の電力を消費するのではないか?多岐に渡る問題が指摘されながら止まらない巨大事業・リニア中央新幹線。途中ルートの長野県で起こっているさまざまな問題を検証した信濃毎日新聞の長期連載(2022年1~6月)に、その後の展開も含めて書籍化。
目次
第1部 集落消滅
第2部 沈黙の谷
第3部 残土漂流
第4部 夢と現実
第5部 暗中掘削
第6部 電力依存
第7部 事業再考
1 ~ 1件/全1件
- 評価
稲岡慶郎の本棚
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
けんとまん1007
44
まさにこの国の在り様の象徴の一つ。動き出すと止まらない。意味の有り無しは、関係ない。萎んでいく今、どこに意味があるのかが、誰も答えない。ひたすら、次の世代にツケを回すだけ。2023/09/05
青雲空
6
想像していた以上に性質の悪い事業だった。繰り返し問いかけられているのは「国策民営」の鵺(ヌエ)性。 国策だから、財政投融資の低利資金を利用し、県や市の職員に用地買収を強いる。一方、民間事業だから情報を隠す。労災事故を公表せず、説明会は地元民限定でメディア排除、議事も非公開。その理由が「住民に忌憚のない意見を言ってもらうため」とは聞いて呆れる。反対意見を世に知られたくない、十分な説明をしていないことがバレるのを恐れているためとしか考えられない。技術的にも、リニア計画は「恐竜」化している。2023/06/21
やご
5
建設中のリニア中央新幹線を、様々な問題をかかえながら工事が進んでいる経由地・長野県の立場から考える、というノンフィクション。元は地方紙の連載記事で、地方紙ならでは、という内容です。リニア中央新幹線というと、建設・運営主体はJR東海なのですが、全国新幹線鉄道整備法で計画された路線であり、巨額の資金が政府より貸与され、用地取得の交渉は自治体が担当でと、確かに「国策民営」という形容が当てはまります。(続く)→ https://gok.0j0.jp/nissi/1509.htm2024/03/20
gotomegu
5
今工事が進行中のリニア。その問題点についての記事を後日談と合わせて集録。トンネルを掘ったでてきた土の捨て場がなかったり、水源を傷める恐れがあったり、行き交うトラックがストレスだったり。大工事なので周りへのストレスも大きい。国策民営のプロジェクトなので、説明責任も小さかったり、秘密にできちゃうのが問題。国策民営に近くてトラブルがあったのが、檜原村のゴミ焼却場問題だな。2023/08/18
宮崎太郎(たろう屋)
3
リニア新幹線の計画路線の沿線に住むものとして、新聞連載時も注目していました。書籍になり、記事掲載後の雑感も織り交ぜ、注目に値する一冊だと思います。記者の皆さんが迫ろうとして、踏み込めないJR東海。その末端のトンネル作業現場、接する地域の住民の姿もリアルタイムで記事は書かれます。公開されたトンネル作業現場を撮りSNSに投稿するとJRから削除を命じられる。ネットは全て監視していますとのセリフは恐すぎる。2023/09/03