内容説明
大英帝国の末期に活躍した園芸家、コリングウッド・イングラム。桜の魅力にとりつかれた彼が遠路訪れた日本で目にしたのは、明治以後の急速な近代化と画一的な“染井吉野”の席巻で、日本独自の多種多様な桜が消えようとする姿だった。「日本の大切な桜が危ない!」意を決した彼はある行動に出た―。「桜守」舩津静作など多様な桜の保護に尽力した日本人との交流や、日英のかけ橋となった桜という「もの言わぬ外交官」をめぐる秘話もエピソード豊かに織り交ぜながら、「日本の桜の恩人」の生涯を辿る。
目次
第1章 桜と出会う
第2章 日本への「桜行脚」―日本の桜が危ない
第3章 「チェリー・イングラム」の誕生
第4章 「本家」日本の桜
第5章 イギリスで生き延びた桜
第6章 桜のもたらした奇跡
著者等紹介
阿部菜穂子[アベナオコ]
ジャーナリスト。1981年、国際基督教大学卒業。毎日新聞社記者を経て、2001年8月からイギリス・ロンドン在住。「ルーシーとラッパズイセン」が2011年文春ベストエッセイの一編に選ばれている(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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えすてい
8
サクラと言えばあまりに日本国内ではソメイヨシノで覆いつくされてすぎているため、日本人ほどサクラに「無知」な人がいかに多いのか。イングラムの悪い予感は日本で現実のものとなった。一本一本形質や性格の違う野生種や長い年月と心血の末生み出された数多の栽培種。これをないがしろにしてしまった日本人は果たして「サクラの国日本」と呼べるだろうか?なお、数多の栽培種に関しては、東海地方では東山動植物園「桜の回廊」で見ることができるので名古屋地区の人には是非とも見てもらいたい。春には色んな品種の桜の花を楽しめる格好の場所だ。2016/09/15
やま
4
新しい年になって早々、良い本を読むことが出来ました。日本は様々な品種改良された園芸品種の桜があります。その多くが江戸時代につくられたものですが、明治維新の混乱の中でサクラも危機を迎えます。その危機をすくったサクラを愛する造園家たちがいたことは知っていたのですが、遠く海を渡ったイギリスにもサクラの恩人がいたとは。サクラには良い面でも悪い面でも、たくさんの物語がありますね。2017/01/09
さとちゃん
3
日本の桜に魅せられた英国人によって桜の多様性が守られた、というお話。江戸期の品種改良により多様性を増した桜の園芸種が、染井吉野に一種に取って代わられる様が当時の政策とリンクされていて興味深い。2021/08/22
おんま
3
彼が生きた時代に、日本に来て桜を持ち帰り自国で育てる、という仕事は偉業以外のなにものでもない。彼にはお金と時間があったから出来た、と言ってしまえば元も子もないが。そういう人が守ってくれたからこそ、日本の桜はこんなに美しいんだな、と満開の桜を見て思った。2017/04/19
Junko Yamamoto
3
桜を愛したイギリス人の話に日本の近代の歴史が重なり、桜の美しさが一層切なくなった。 アンチソメイヨシノ度が益々高まる!2016/04/14
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