出版社内容情報
古来,人々のこころを引き付けて止まないソクラテス.その彼が「なぜ死なねばならなかったのか」.西洋哲学の古典,プラトンの『弁明』『クリトン』など彼を知っていた同時代人たちの証言を読み進めることによって,その謎解きを試みる.
内容説明
古来、人々のこころを引き付けて止まないソクラテス。その理由は彼の哲学活動のあり方や教説というよりも、むしろ、その死に臨んだおりにとった態度にこそあるといえる。死刑を免れることができたのに自分からすすんで死んでしまったように見える彼は、「なぜ死なねばならなかったのか」。西洋哲学の最も有名な古典、プラトンの『ソクラテスの弁明』『クリトン』など、ソクラテスを知っていた同時代人たちの証言を読み進めることによって、その謎解きを試みる。
目次
第1章 告訴―ソクラテスはなぜ訴えられたのか(告訴状;二つの訴因―その真意は何か;プラトンの理解 ほか)
第2章 裁判―ソクラテスはなぜ死刑になったのか(アテナイの裁判制度;プラトンの『弁明』;クセノポンの理解)
第3章 牢獄―ソクラテスはなぜ逃亡しなかったのか(『クリトン』の記述について;クリトンの勧告;ソクラテスの応答 ほか)
著者等紹介
加来彰俊[カクアキトシ]
1923年生まれ。京都大学文学部哲学科卒。法政大学名誉教授
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感想・レビュー
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棕櫚木庵
21
「序章」,「告訴」,「裁判」,「牢獄」,「結び」の章からなり,大本の資料になるプラトンとクセノポンの記述,後世のさまざまな評価,そして,当時の政治状況について論じる.▼ソクラテスが毒杯を煽ったのは衆愚政治への,命を張った強烈な皮肉・批判だったという説がある(ラミス).『弁明』を読むとそんな気もしてくるが,本書によると,この裁判は国外追放で決着がつく(手を打つ)はずだったのに,ソクラテスが自身がひっくり返した,と(p.81, p.148).そうだとすれば,ラミス説がいっそう説得力を増すように思った.2020/06/30
なつき
2
『ソクラテスはなぜ死んだのか』再読。タイトル通りの内容でありながら、哲学者ソクラテスは死なないこともできたのに、という巨大な前提を読めば全身で感じることができる。ソクラテスは三度は死を免れる機会があった。裁判での弁明、反対量刑の要求、そして友人たちのすすめ。だが、それでも、なぜ?2017/04/14
なつき
2
加来彰俊『ソクラテスはなぜ死んだのか』読了。ソクラテスの裁判、そのなかでもとりわけ、なぜソクラテスがクリトンの勧めを受けて死を免れなかったのかということを論じている。プラトンとクセノポンそれぞれの著作を用いて論じているが、著者はクセノポンに若干懐疑的。わりと読みやすかった。2014/06/08