所有という神話―市場経済の倫理学

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  • サイズ B6判/ページ数 286,/高さ 20cm
  • 商品コード 9784000233965
  • NDC分類 150.4
  • Cコード C0012

出版社内容情報

市場経済の合理性と効率性の神話を解体する.市場原理万能の神話と所有という観念の支配を倫理的・批判的に考察する.共感と共生そして平等に基礎を置く心的システムとしての「私」のヴィジョン―「人―間の倫理学」へ.

内容説明

利潤という獲物を追って、負け組になるまいと日夜走りつづける。私たちは、そこで何を犠牲にしているのだろうか。市場経済という一つの社会システムによって、環境システムは破壊され、心的システムは目に見えないままに腐食される。もろもろのシステムは、互いに汚染し合って危機は加速度的に深まってゆく。企業倫理の無残な崩壊も、さまざまな事件の背後にある自閉化も、その現れではないか。市場システムを倫理的に問うための、条件と根拠はどこにあるのだろうか。市場メカニズムを、自己組織システムの理論を援用しつつ解明し、経済行為を駆動している「所有」という観念の由来をたずねる。システムの孤立した一要素としての経済人モデルに替わって、他者たちと私との存在の相互承認に基づく平等と、そこに基礎を置く「人‐間」的関係のヴィジョンを模索する。効率性における優位は疑うべくもなく、他に選択肢はないかに見える市場システムの人間的・倫理的含意を考察する、「人‐間の倫理学」に向けて。

目次

余剰と利潤、自己愛と共感
第1部 市場について(経済システムにおける市場/経済主体にとっての市場―市場経済の倫理学的アセスメントのために;共生の強制、もしくは寛容と市場)
第2部 所有について(所有という問い―私のものは私の勝手?;所有というナウい神話―間柄の私有化の思想史)
第3部 平等について(人はみな平等である、とはどういうことか;機会の平等・結果の平等;人‐間的“関係”の関係―存在承認の平等)
平等の正当化

著者等紹介

大庭健[オオバタケシ]
1946年生まれ。専攻、倫理学。東京大学大学院博士過程単位取得。現在、専修大学文学部教授
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

ゲニウスロキ皇子

2
以前から「能力開発」や「人的資源」といった単語が気持ち悪くて仕方なかった。自らを開発すべき資源であると捉え、他者を用益をもたらすモノとして扱うことに抵抗があったから。市場経済システムは、自己の所有するものを自由に用益・処分しながら競争することを我々に課す。そして市場の埒外に置き去りにされてしまった持たざる者たちの声はノイズとして遮断される。そもそも「市場の平等」という物言いは、そこに参入できる強者の理論なのだ。本書を読むことで、「所有」という概念が市場経済システムにおいて含む問題を透かし見ることができる。2012/03/04

壱萬参仟縁

1
アマルティア・センやマイケル・サンデルを想起すれば、本著の倫理と経済の相互作用を解明しようという知的好奇心に共感できると思う。評者の問題意識もまた、社会学をバックボーンとしているので、相互作用や関係性へのまなざしは共有できた。市場というもの、所有というものを倫理学の視座から捉え直して、システム、しくみの不全というものが社会問題までをも引き起こしている。こうした現実に対して、 カヴァーの裏にも書いてあるように、相互承認に基づく平等、という概念が今日もなお、格差が先鋭化して極限に達している現在も通用しよう。2012/10/05

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