内容説明
「いつ平常にもどると思う?」かつて平常だったことがあったのだ―。それぞれの事情と魂胆と謀略を描いて、現代アメリカへの痛烈な風刺の毒をきかせた『ザ・ゼロ』。エドガー賞長編賞受賞の気鋭の作家による、九月十二日のスリラー小説=新型クライム・ノベルの傑作が登場!主人公の意識と記憶の混濁に翻弄されるこのカフカ的展開に、果たしてあなたはついてゆけるか?
著者等紹介
ウォルター,ジェス[ウォルター,ジェス] [Walter,Jess]
作家。2005年に『市民ヴィンス』でエドガー賞長編賞を受賞。翌年には『ザ・ゼロ』全米図書賞の最終候補作となる。米国ワシントン州スポーカン在住
上岡伸雄[カミオカノブオ]
学習院大学文学部英語英米文化学科教授。現代アメリカ文学
児玉晃二[コダマコウジ]
学習院大学外国語教育研究センター非常勤講師、明治大学、國學院大學兼任講師。専門は現代アメリカ文学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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hagen
11
表題の『ザ・ゼロ』は同時多発テロ事件のグランドゼロを想起させる通り、ビルの倒壊現場の悲惨さを扱う物語ではある。しかしテロという行為による残虐性を全面に打ち出す悲劇性とは赴きの異なる目で描かれる。警察官のレミは焼け焦げた瓦礫を目の当りした事件当日を境にして、政府機関や秘密組織の陰謀の中に取り込まれる事で、現実とは捻れをきたした精神世界に迷い込む。話は先を追う毎に中途半端な形で途絶え、主人公レミの不可解な夢の世界が頻繁に語られ、個々のエピソードを常に断片的に扱う事で、次元の違いに迷い込む様な世界観が描かれる。2020/08/24
タナー
8
久々に読む本の選択を誤ったって感じかな。 主人公が記憶の障害を抱えているということで、話があちこちに飛んで非常に読みづらい。途中何度も、読むのやめようかと思った。9.11を題材にした作品として高い評価を受けているとのことだが.... 俺にはこのテの作品は合わないな。ラスト・シーンも意味不明だし。一体、作者はこの作品で何を訴えたかったのか?こんな作品を読了できたことに、自分でも驚いている。2017/10/17
qoop
8
記憶障害による同一性の喪失と視野狭窄による集中力の欠如という直喩によって、混沌の中で悪意なく偏執的に行動する主人公。その姿はアメリカの、911後の右に走った人心と国家の姿を端的に示している。不可視の角度から描かれた自画像とでも云うべきか。〈あの人たちが皆、本当に"信じている"ってことさ。あの日、煙のなかにサタンを見たなんてことをね。ちょっとやる気が失せないか? 無知な闇黒時代の狂信的行為と戦っているはずなのに、自分が守ろうとしている人の半分は、煙と灰の雲のなかに悪魔が住んでいると信じているんだぞ〉p4162015/01/08
Ecriture
7
記憶が飛びがちで集中力を欠いた(元)警官のレミは、9.11の真相を明らかにすべくFBI、CIA、ニューヨーク市長(ザ・ボス)の思惑が錯綜するアメリカを飛び回る。クリストファー・ノーラン×ドン・デリーロ×レイモンド・チャンドラーのような作風で、アラブ系市民を利用して彼らの罪をでっちあげ、自らの悪を知りつつも忘却によってたやすく悪を為し続ける巨大マフィアとしてのアメリカの姿を描き出す傑作。2015/04/30
Ai
6
主人公が記憶障害を持つゆえ、こまごまと断ち切られる章運びに最初は読むのが苦戦したが、その混乱まるごと乗っかれば、9.11直後のアメリカのカオスっぷりや火事場泥棒的な陰謀、悲劇に便乗したビジネスの姿が浮かび上がってきて読ませる。それぞれのエピソードが当時のアメリカを強烈に風刺していて痛烈。特に、警察官・消防士たちを英雄に祭り上げておいて、何も語らせないところが特に。2020/01/11
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