内容説明
日本文化の理解者として知られるラフカディオ・ハーンの著作は、二十世紀前半の中国においてどのように受容され影響力をもったか。従来の研究史を着実に踏まえつつ、膨大な一次資料を渉猟し、作家没後のドラマを追跡。日中関係史を再検証しつつ、中国近代史におけるハーンの重要性を明快に論証。比較文化史的また多文化主義的視点から新たな作家像を描き出す。また作品の新たな読み直しを通して、近代日本思想史におけるハーンの新たな意味をも浮き彫りに。ハーンの歴史的・現代的意義を新しい位相で捉える比較文学・比較文化研究の労作。没後百年、周到な準備を経て書き下ろされた本書の登場により、八雲研究はいま新たな地平に立った。達意の日本語による注目の一冊。
目次
第1章 世紀末の文明批判(東洋と西洋の融合;キップリングとロティの日本 ほか)
第2章 日本文化を語る(「親日派」―Japanophile;遺伝という思想 ほか)
第3章 批評家ハーン(三〇年代の中国文壇と小泉八雲;京派作家と小品散文 ほか)
第4章 戦時下の小泉八雲(『東西』の「コスモポリタニズム」;『風雨談』『天地』『雑誌』に群がる作家たち ほか)
著者等紹介
劉岸偉[リュウガンイ]
1957年、北京生まれ。1977年、北京外国語学院アジアアフリカ学部入学。日本語を学ぶ。卒業後、北京大学大学院東方言語文学系を経て、82年来日。東京大学大学院総合文化研究科に入学、比較文学・比較文化を学び、89年博士号取得。札幌大学を経て、1998年より東京工業大学学部・大学院で教鞭をとり指導にあたる。外国語研究教育センター教授。『東洋人の悲哀―周作人と日本』(サントリー学芸賞受賞、河出書房新社、1991年)など多数の著書あり
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