内容説明
一九四〇年締結の日独伊三国同盟は、日本が破滅への道を辿る分岐点の一大モニュメントであった。東京裁判の国際検察局(IPS)による尋問調書の中にあって長年注目されず埋もれていたドイツ人外交官らの証言を手がかりに、同盟成立にまつわる謎に新たな光を当て、「松岡外交」の舞台裏とその内実を鮮やかに描き出す歴史ノンフィクション。
目次
第1章 三国同盟成立「正史」―松岡洋右の視点から(松岡洋右の逮捕;「バスに乗り遅れるな」 ほか)
第2章 秘密書簡G一〇〇〇号―「秘密議定書」の正体(「状況を見てこい」;「それはシュターマーの仕事だ」 ほか)
第3章 同床異夢―同盟締結交渉の舞台裏(ドイツ側の思惑―外交官の報告・尋問から;「ヒトラーの外交官」「総統の密使」の横顔 ほか)
第4章 調印後の駆け引き―「松岡外交」の実態(「正直な仲買人」;大島浩大使の再登場 ほか)
第5章 破綻―埋もれた調書が語る歴史の真実(日ソ中立条約;日米交渉 ほか)
著者等紹介
渡辺延志[ワタナベノブユキ]
ジャーナリスト。1955年、福島県生まれ。早稲田大学政治経済学部卒業。朝日新聞社に記者として勤務するかたわら、独自に歴史資料の発掘、解読に取り組む(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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masabi
18
【要旨】三国同盟がいかに虚偽に溢れたものだったのかを当事者の極東裁判調書から明らかにする。【感想】対米交渉においてその成否に大きな影響を与えたのが三国同盟である。同盟を固持したために交渉は暗礁に乗り上げる。ところが、同盟自体がその目的すら一致しておらず、まだ交渉途上のレベルにも関わらず交渉プレイヤーの政治的都合から締結に至ったお粗末なものだった。おもしろいのは日独ともに野心に駆られたプレイヤーが登場する点だ。そして、本国に対しても偽りの報告をして事態を混迷させる。2016/11/25
BLACK無糖好き
2
日独伊三国同盟締結までの舞台裏を、東京裁判の国際検察局(IPS)による、松岡洋右、大島浩、オイゲン・オット、ハインリッヒ・シュターマーらへの尋問調書から抉り出す。これを読むと同盟条約の外交交渉は成立までに至っていない段階で、根幹部分がかみ合わないまま、小手先の手段で繋ぎ合わせたものに過ぎない事が明瞭に見えてくる。条約調印後シュターマー帰独時に731部隊のまいたペスト菌感染ノミによる満州での足止めが、松岡との約束を速やかに本国へ伝える事が出来なかった事の影響というくだりはオオッと反応してしまった。2015/01/28
takao
1
ふむ2020/01/18
フンフン
1
ひどい話である。三国条約添付文書、いわゆる秘密書簡G1000号は、ドイツ本国に伝えられてもいなかったのだ。G1000号は自主参戦を定めた秘密協定とされてきた。これがオット大使の個人書簡で、ドイツ本国はまったく関知していなかったというのでは、海軍を納得させるためのウソでしかなかったということである。従来からこの書簡が日本の外務省のみにあって、ドイツ側に存在しないことから、疑惑は語られていたが、同盟を骨抜きにする約束を独断してしたシュターマーは、リッベントロップ外相の怒りを恐れて伝えなかったのだ。2019/11/21