内容説明
近代日本の女性は、国家といかに共謀し、そして、背反したのか。明治期の女子教育をめぐる小説や言説、一葉の和歌と小説、吉屋信子の“女の友情”もの、そして、『国体の本義』を精読し、文学的感傷の力が、国家的暴力の隠蔽と女性の国民化にいかに作用したかを明らかにするとともに、それらの女性表現に隠された、国家との争闘の痕跡をたんねんに読み解く。近代日本の女性文学を新しい角度から照射する、気鋭の研究者による意欲作。
目次
文学的感傷と暴力―高橋しん『最終兵器彼女』を読む
1 国民化する/される女たち―明治期女子教育の軌跡(学問か器量か―彼女たちの受難;「教育勅語」と女学生―東京女子高等師範学校を事例として;国家のための女たち―娼妓たちの日清戦争)
2 女が“和歌”を詠むとき―樋口一葉と日清戦争(“女性作家”と“国民”の交差するところ―一葉日記を読む;日清戦争を詠むこと;凱旋する文明国―一葉・鏡花が見たもの)
3 女の友情、そのゆくえ―吉屋信子と大東亜戦争(少女たちの絆―『花物語』『女の友情』を読む;“女の友情”のゆくえ―『女の教室』における皇民化教育;帝国の“非国民”たち)
文学的感傷にあらがうために―『国体の本義』を読む
著者等紹介
菅聡子[カンサトコ]
お茶の水女子大学大学院人間文化創成科学研究科教授。1962年、福岡県生まれ。お茶の水女子大学大学院博士課程人間文化研究科修了。博士(人文科学)、専門は、日本近現代文学。とくに女性文学研究を中心とする(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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