出版社内容情報
『失われた時を求めて』は幾重もの謎に包まれている。──長篇はいかに誕生したのか? 対比されているのはスワン家とゲルマント家なのか? ヒロイン・アルベルチーヌはなぜ捉えどころがないのか? 「私」という一人称の仕掛けとは?──小説と批評を総合した希有なる作品の隠された構造を、草稿研究の先駆者が精緻に読み解く。
内容説明
『失われた時を求めて』は幾重もの深い謎に包まれている。―長篇はどのように誕生しし、いまある形になったのか?没後百年を経て発見された「七十五枚の草稿」とは何か?社交界における同性愛とユダヤ性の位置づけと、作中での芸術の果たす機能とは?ヒロイン・アルベルチーヌはなぜ捉えどころがないのか?すべてのできごとを語る一人称の「私」とは何者なのか?―アルベルチーヌ物語の生成過程などを突きとめたプルーストの草稿研究の先駆者が、長篇に隠された構造と作家の手法を精緻に読み解き、小説と批評を総合した希有なる作品の新たな相貌を浮かび上がらせる。巻末に『失われた時を求めて』全巻の梗概を付す。
目次
第一部 大長篇誕生の謎(まぼろしの初稿の発見―「七十五枚の草稿」を読む―;小説と批評の総合―『サント=ブーヴに反論する』の未完の構想―;増殖する長篇―終わりなき加筆をたどる)
第二部 作品の構造をめぐる謎(社交界に君臨する人びと―貴族・ブルジョワ・ユダヤ人―;ジュヌヴィエーヴ・ド・ブラバンの幻灯―コンブレーとゲルマントをつなぐ伝説―;画家ベノッツォ・ゴッツォリ―「コンブレー」から『囚われの女』への四極構造)
第三部 芸術と芸術家をめぐる謎(キク、乃木将軍、浮世絵、水中花―ジャポニスムへのまなざし―;ギリシャの彫刻とエジプトのミイラ―偶像崇拝と分身について―;作中の芸術家たち―エルスチールを中心に)
第四部 恋心と性愛をめぐる謎(情熱と冷静―恋心を語る自由間接話法―;ジッドとプルーストの対話―『コリドン』から『ソドムとゴモラ』へ―;「サディストは悪の芸術家である」―ヴァントゥイユ嬢の純粋さ)
第五部 作家の方法をめぐる謎(パリの物売りの声―フィクションか批評か―;ゴンクール兄弟の「未発表の日記」―文体模写とフェティシズム―;第一次大戦下のパリ―反リアリズムの方法)
著者等紹介
吉川一義[ヨシカワカズヨシ]
1948年、大阪市生まれ。東京大学大学院人文科学研究科博士課程満期退学。パリ・ソルボンヌ大学博士。京都大学名誉教授。著書:Proust et l’art pictural(Champion、バルベック=カブール・プルースト文学サークル文学賞、日本学士院賞・恩賜賞)ほか。翻訳:プルースト『失われた時を求めて』(全14巻、岩波文庫、日仏翻訳文学賞特別賞)ほか(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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tom