内容説明
独特の作風で人気を博したマンガ家・山田花子はなぜ自死したのか。今、青少年の新たなこころの障害が注目されている。非言語性LDとかアスペルガー症候群といわれるその障害は、通常の学習障害や自閉症と違い、見た目には普通の子どもと変わらないが、周囲の人間とうまくコミュニケーションが取れず、しばしばいじめに遭う。山田花子の生涯を、日記や診療カルテから再構成することを通して、思春期・青年期のこころの苦悩を明らかにし、隠蔽された障害の姿を提示する。
目次
第1章 山田花子との出会い
第2章 精神分裂病と描画
第3章 山田花子の生涯
第4章 「裏問題児」としての過去
第5章 山田花子と「十七歳問題」
著者等紹介
石川元[イシカワゲン]
1948年名古屋生まれ。精神科医。香川医科大学教授。大胆な発想と柔軟な解釈には定評があり、とくに思春期・青年期のこころの障害、家族をめぐる病い、描画による病像の解釈などに、ユニークな理論に基づく治療法を確立している
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感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gtn
17
彼女は本音と建て前を使い分けられなかった。だから、偽善者を憎んだ。憎むどころか排除しようとした。しかし、排除するほど心が強くなかった。このため、実母、教師、漫画の担当者等、人間関係が緊密であればあるほど自らを消耗させた。結果、団地から飛び降りる。「無職A子さん」と報道される。名を秘され、最期は本望だったろう。2020/08/10
hikarunoir
2
デフォルメを障害にされちゃ敵わない一方、作中に滲む人間観は障害が疑えないこともない。死までの過程が多角的で大変な緊迫感。2015/09/01
charu
2
学者による心理分析はなくても良かったかな、と思う。心の奥底にあった煩悶や苦悩は、第三者の分析で解明できるものでもなかろうと。故人が残した作品、言葉という「事実」だけを読みたかった。2010/12/05
hiratax
1
遺族からの抗議を受けて絶版となっている。専門医としての本格的な臨床研究。テーマが山田花子じゃなかったら、読まない。専門用語も多く読み通せない。当事者にとってみればせっかく話したのに「ひどい」話になっている。書くこと、著すことの暴力性を露呈しているのだとも。2014/07/02
磯吉
1
入院中の本人の日記と、病院の記録が読めるので、自殺直前日記より、様子が良くわかる。 著書が他人と言う事も、自殺直前日記では親がオブラートに包んでいた事があり、やはり客観性という視点では価値がある。 しかし著書の分析や、勝手な想像憶測を無責任に書き連ねているのは感心できませんでした。 自殺直前日記もこちらも、山田花子さんの知り合いの語る人物像が一番信憑性が高く思えました。 山田さんが嫌った編集者や、山田さんがファンであった大槻さんの彼女に対する文章は、とても的を得ているように思いました。2014/07/08