出版社内容情報
第二次大戦および冷戦の覇者、アメリカ。そのアメリカは、どのような経緯で現在の世界の混沌を生み出してしまったのか。軍事をめぐる歴史と、テロなどの不安定の連鎖拡大の現状について、簡潔に、かつ深く洞察した待望の書。
内容説明
第二次大戦および冷戦の覇者、アメリカ。そのアメリカは、どのような経緯で現在の世界の、そして自国の混沌を生み出してしまったのか。大ベストセラー『敗北を抱きしめて』の著者があらたに取り組む、アメリカの暴力の歴史。軍事をめぐる歴史と、テロなどの不安定の連鎖拡大の現状について、簡潔に、かつ深く洞察した。特別の書下ろしとして、トランプ時代を危惧する日本語版オリジナルの序文を付す。
目次
第1章 暴力の測定
第2章 第二次世界大戦の遺物
第3章 冷戦期における核の恐怖
第4章 冷戦期の戦争
第5章 代理戦争と代行テロ
第6章 世界の旧体制と新体制一九九〇年代
第7章 9・11事件と「新しいタイプの戦争」
第8章 不安定の連鎖拡大反応
第9章 七五年目の「アメリカの世紀」
著者等紹介
ダワー,ジョン・W.[ダワー,ジョンW.] [Dower,John W.]
1938年生まれ。日本近代史・日米関係史。マサチューセッツ工科大学名誉教授
田中利幸[タナカトシユキ]
歴史家。元広島市立大学広島平和研究所教授(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬参仟縁
45
2017年初出。我々は、豊かで、自国を美辞麗句で賞賛する見事な武装国家、巨大な軍事力と過度の傲慢さをもつ国である一方で、深刻な被害妄想、失敗感、病的逸脱に苛まれているという、矛盾に満ちた状況に直面している(ⅹⅸ頁)。「核タブー」とは、核兵器を多かれ少なかれ通常兵器と同じように扱うことに反対する感情であり、その感情は単に抑止力の考えを反映しただけではなく、同時に、高まる倫理的批判をも反映した。その一方で、核兵器による報復に対する恐怖が、第二次世界大戦後数十年にわたって、米ソ軍拡競争を2018/03/07
ぐうぐう
32
『敗北を抱きしめて』のジョン・ダワー最新刊が、母国アメリカの暴力の歴史を解明する内容だと聞いて、まずは違和感を覚えた読者も多いはずだ。日本の近現代史を研究し、著作の多くが日本を扱っているダワーが、母国のこととはいえ、暴力の歴史を綴るというのは、唐突感が拭えない。しかし、本書の訳を担当した田中利幸の解説を読むと、なるほどと納得させられた。あえて日本から照射することで、アメリカの実像を明らかにしようとしてきた、これまでのダワーの姿勢が見えてくるのだ。(つづく)2018/01/05
風に吹かれて
18
アメリカの考え=トランプ大統領の考え自体の是非は議論すべきこと少なくないが、圧倒的軍事力を持つ国の言動は世界に影響する。それは今に始まったわけではなく、第二次世界大戦を契機として世界の指導者的存在として共産圏との冷戦下核爆弾製造競争にしのぎを削り、ハリウッド映画さながらの諜報活動・破壊活動を行ってきたアメリカは、今や経済上の如何なる不利(トランプ大統領が思うところの)も認めまいとして理不尽に思える経済戦争にも着手しようとしている。世界をゲーム・ボードにして利益を追求するパワーゲームは終了させてもらいたい。2018/05/28
ふぇるけん
12
第二次世界大戦以後のアメリカが行ってきた戦争や軍事活動に対する論評。読めば読むほど、アメリカにとっての「安全」はその他の国にとっての「危険/脅威」であることがよくわかる。これは決して他山の石などではなく、その米国に追従し続けている日本に住んでいることを自覚し、安全保障についてしっかり見識を身につけることが重要だと感じた。2020/01/18
フム
11
第二次世界大戦が世界にもたらした荒廃の中で、アメリカはその地理的な優位さから、自国への侵略や爆撃を免れた。しかも軍需生産が経済に活気をもたらし、アメリカを世界でもっとも繁栄した国家に、そしてもっとも発展した軍事国家にした。それは今となっては第二次大戦の不幸な遺物といえる。特に冷戦期のアメリカの諜報活動は元CIAによる資料も公開されている。映画で目にしたことがフィクションでもなんでもないことに驚いた。911は、それまでのアメリカの独善と暴力が剥き出しになったものだといえる。それがテロとの戦争につながっていく2018/05/31