内容説明
ナチスによるユダヤ人殺戮のキーマン、親衛隊中佐アドルフ・アイヒマン。戦後アルゼンチンに逃亡し、リカルド・クレメントの偽名で自動車会社に勤めていた彼を、一九六〇年、イスラエルの情報機関モサドが拘束、イスラエルへ連行する。全世界が注目したアイヒマン裁判。準備にあたって、イスラエル警察は八カ月、二七五時間にわたり尋問をおこなった。迫真の駆け引きから浮かび上がる、アイヒマンの人間像とは!過去に何が起こったのか、それは将来また起こりうるのか。歴史の事実と可能性を直視し、「悪の凡庸さ」を超えて、人間存在の理解を深めるための必須史料。
目次
第1部 親衛隊員番号45326
第2部 追放・移送・抹殺
第3部 強制収容所との関係
第4部 最終解決
第5部 ハンガリー作戦
第6部 終戦から逃亡へ
著者等紹介
ラング,ヨッヘン・フォン[ラング,ヨッヘンフォン][Lang,Jochen von]
1925年ベルリン生まれ。雑誌『シュテルン』の現代史編集局に勤務。現代史シリーズ『ヒトラー帝国最後の100日』『われわれと同じ殺人者』を通じて有名となる
小俣和一郎[オマタワイチロウ]
1950年東京都生まれ。精神科医・精神医学史家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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yoneyama
14
1960年になってイスラエル警察に捕まった、ホロコーストの実務担当者アドルフ・アイヒマンの尋問調書。アイヒマンの生い立ちやユダヤ人絶滅作戦の中心担当者となっていった経緯を読むに連れ、当時ドイツに居た普通の人であり、普通の官僚だったことが浮き彫りになっていく。たかだか1930年代に拡がったナチズムも、当時のドイツ人にとって「よくある」差別思想の延長だったのかもしれない。普通の現代日本人である私は、長年かけて築いた道徳や良心に基づいて善悪判断をしているはずだが、差別思想に関してはどうか。無関係と言えるのか?2022/11/14
ののまる
7
ナチの中でも目立った昇進もできず、嫉妬と業績趣致と責務履行に終始した結果、ユダヤ人大量殺戮を推進したアイヒマン。小役人で仕事熱心なセールスマンが、歯車のひとつとして暴力装置となり何の良心の呵責もなく、とにかくなんとか罪を逃れようとあがく。ときには取締官におもねり、擦り寄り。モンスターでも何でもなく、単なる器の小さい普通のリーマンだった衝撃。当事者たちは即刻死刑やら復讐やらしたかったろうが、数ヶ月に及ぶ徹底した取り調べの記録は、いまなおたくさんの参考になる。2023/03/29
Gamemaker_K
6
いやあ・・・なんていうか。レスさん本当にお疲れ様、っていうのが一つ。おいアイヒマンそりゃねえだろ、ってのが一つ。・・・言うこと聞いてただけだ、というのはまあ一万歩譲るとしても、疑問は持てよということだね。2018/11/25
nappa
4
図書館で見つけて、立ち読み程度にしようと思っていたら結局読了しました。2015/01/10
メロン泥棒
4
600万人のユダヤ人を「移送」し「最終解決」した男は平凡な公務員だった。ナチスドイツの敗戦後1960年まで逃亡したアイヒマンに対してイスラエル警察が行った尋問の詳細な記録。全編インタビュー形式で収録されている。自分は命令に従っただけと主張しながらも、積極的に仕事をこなしていたことを指摘され狼狽する様子などリアルに取調室の様子が伝わってくる。過去の価値観に従い上官の命令に従う事が罪になるのかどうかは議論の余地はあるが、世界史と心理学の歴史に残る尋問であることは間違いない。2010/12/01
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- Jose Dávila