内容説明
境界を超え、「非物質化」する資本主義経済の未来とは。現代社会の全体像を把握し、新たな知の基盤を築くための挑戦。
目次
総説 現代資本主義の本質と経済学の役割
1 経済理論の可能性(資本主義経済三〇年考―グローバリゼーションの功罪;金融化と現代資本主義―ポスト・ケインズ派のアプローチ;マルクスの可能性―現代の貧困と資本の過剰;分析哲学から経済学へ―ケインズ思想の潜在力;イノベーションの経済・経営思想)
2 グローバル経済の諸相(「南」から見たグローバル化と重層的ガヴァナンスの可能性;二一世紀の多国籍企業と現代の「租税国家の危機」)
3 資本主義経済の将来展望(資本主義的世界システムの経済原理;社会保障/社会政策の新思考;資本主義経済の非物質主義的転回)
著者等紹介
諸富徹[モロトミトオル]
1968年生。京都大学大学院経済学研究科教授/財政学、環境経済学(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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壱萬弐仟縁
51
新しい資本主義への懐疑があって借りて読む。経済学の問題点:資源配分の効率性を唯一の評価基準として全学問体系を構築。何をもって公平な分配と判断するのかに対して、回答を与えることができない(7頁)。重要なのは、排除されてきた人々の声を参画に向けて組織、人間の安全保障に立脚して民主的ガヴァナンスを構築すること(13頁)。シュンペーターによれば、イノベーションは、社会階層を下位から上位に移動するための重要な機会(149頁)。昔風にいうと、下剋上みたいな感じも? 2022/02/11
ぽん教授(非実在系)
5
全体的に新しい古典派的なアプローチや金融資本主義・グローバリズムには批判的であるが、論者の立場や論点、書き手のレベルはバラバラである。個人的に読み応えがあったのはケインズとウィトゲンシュタインが分析哲学からプラグマティストになっていく過程。ポストケインズ経済学は手堅く、マルクスについてはむしろフーコーやバウマンなど社会学寄りの論者を扱うパート(後期近代論など)の方が面白かった。2018/03/21
numainu
3
評価C2016/07/25
マウンテンゴリラ
2
「ものづくり」に拘り、バブル直前までに、産業資本主義の頂点の一歩手前までいった日本の時代も、金融資本主義に活路を見いだし、社会主義の崩壊とも相まって、主役の座を取り戻したかに見えたアメリカの時代も、結局、資本主義の崩壊に向けた序章にすぎなかったのか。もともと、論理的な疑問を抱くほどの知識も無く、ただ漠然とではあるが、資本主義が本当に世界をリードすべきシステムなのかという疑問を抱いてきた私にとって、最近俄に目立つようになった資本主義の危機や終焉等といった類いの本には些かなりとも興味を持っていた。→(2)2017/05/13
aoya513
2
タックス・ヘイブンによって割りを食っているのは労働者、そして企業活動のグローバル化によって交渉力が弱まるのも労働者。加えて今後労働の種類は二極化(極端に知的な専門職もしくはサービス、接待業)し、柔軟性、創造性、学習力、コミュニケーション力などに秀でた人的資本をいかに匿い、いかに無形資産を築き上げるかに企業活動の焦点が置かれる。それに追随するように教育のありかたや社会保障、租税法、社会集団の形成などがより新しくより複雑な観点で評価されるようになる。あ〜あ、生きづらそうだなあ。生き抜きがいがあるともいえるか。2017/05/09