目次
1 アウシュヴィッツ・ミュージアムの道のり(アウシュヴィッツ強制収容所からミュージアムへ;体験者からの伝達;東西冷戦のなかで;東欧の自由・民主化を経て;記憶の風化とその対策;ローマ法王訪問と欧州連合の拡大)
2 ガイドとしてホロコーストと向き合う(戦争を知らない世代からの伝達;歴史学習のための戦争遺産;フィールドワークのための戦争遺産;日本人の見学者たち;ひめゆり学徒の方々との出会い;私とポーランドとの出会い;日本人からの伝達)
著者等紹介
中谷剛[ナカタニタケシ]
1966年兵庫県生まれ。1991年よりポーランドに居住し、1997年、ポーランド国立アウシュヴィッツ・ミュージアムの公認ガイドの資格を取得。現在、同ミュージアムの唯一の日本語ガイド。通訳・翻訳家。オシフィエンチム市に妻と息子二人と暮らす(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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nico
36
旅行に向けて読了。中谷さんの思いや経験が詰まった1冊だった。入場料が無料なのは、「暮石のない墓地である」との配慮からと分かって納得。ホロコーストという悲劇につい目を奪われてしまうけれど、現実は生還したユダヤ人たちを欧州人が皆歓迎したわけではないこと。ポーランドですらユダヤ人を数百人まとめて焼き殺す事件があったこと。そうした人間の残酷さ、弱さを改めて考えさせられた。日本も中国・韓国との関係が危うくて、歴史っていつまで謝罪し、どの世代まで賠償し続けなきゃいけないんだろうと、正直げんなりした気持ちになるけれど→2019/04/09
Nobuko Hashimoto
21
著者はアウシュヴィッツ・ミュージアムの公式ガイド。アウシュヴィッツの収容所跡そのものの説明もあるが、むしろ戦後生まれの日本人が距離的にも関係性においても離れた地で戦争遺産の案内をする意味と意義について語る部分が印象深く、共感する。中谷氏による、より詳細な案内書もあるので、そちらも続いて読みたい。そして、そう遠くないうちに中谷氏に現地を案内していただきたいと思っている。2016/09/14
ののまる
19
「君たちに戦争責任はない。でもそれを繰り返さない責任はある」(ドイツからの若い見学者に)2018/12/25
やん
13
アウシュビッツ博物館の公式ガイドとして20年以上活動してきた中谷さんのことを新聞のインタビュー記事で知って本書を読んでみた。出版は13年前だが、エピローグ前の一節を読んでドキッとした。「多数決の道理で物事が進む民主社会において少数派の人権を尊重することは基本条件だが、そんな常識を踏み潰すエゴの瞬間が、追い込まれていらいらした時や不安になった時の私たちの社会にある。そのことをホロコーストが明らかにしたのだ。」コロナ禍の中でもその瞬間は浮かび上がる。歴史を学ぶことは未来と主体的に取り組むことに繋がる。2020/09/27
圓子
13
旅行の予習に。「自由・民主主義は制度だけでは維持できない」という言葉が重い。ホロコーストが自由・民主主義社会を基盤にして行われたこと、忘れてはならない点である。多数決=民主主義というのは短絡的なのであって、多数決で進むからこそ少数派を踏みにじってはならないのだ。2017/05/06