出版社内容情報
「東洋の魔窟」と呼ばれた香港の九龍城は,英国から中国への全面返還前に解体されたが,最盛期には5万人が住んだ.建築家による調査資料をもとに,超高密度空間を大断面パノラマで再現し,全貌を紹介する大型絵本.
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
101
読み友さんの紹介。さすが”大図解”と銘打つだけに詳細なパノラマ立面図には驚かされた。93-94年の解体直前、当局の許可を得て、住民の退去した城内を測量したり写真を撮ったり調査している。でも、如何せん生活の跡地。まるで死体検案書の趣。生活の痕跡を残し彼らはどこへ?82年のサッチャーと鄧小平の北京での談判で香港の命運は尽きた。返還の決まった香港に、中英間で膠着状態にあった権力の真空地帯、九龍城の「三不管」は意味を失う。ところで「九龍城探検隊」って?若干の香港人を含む日本の若者達のよう…。そして出版は岩波書店。2021/07/16
Toshi
19
こういう大図解もの大好きです。ましてやテーマが「魔窟」と言われた九龍城。取材したのは住人が立ち退いた後のようだが、図解にはびっしりとその生活ぶりが。なんか喧騒が聞こえてきそうだ。その昔、まだ香港の空港が啓徳空港だった頃、飛行機は九龍城で腹を擦りそうになりながら、着陸していたなあ。2021/07/25
りー
18
九龍城の断面図なんて他じゃお目にかかれないんじゃなかろうか。混沌としたその図面からは無数の人々の生活が垣間見え、もうこの城が存在しないんだという事を思いながら眺めると感慨深いものがある。2015/04/07
KF
15
40頁の書籍だが、縦横が巨大。試しに並べてみたらスターバックスのタンブラーを縦に二個並べる程の高さ。開けてみると見開きの図面があって、赤線で説明箇所に続く。取材は取り壊し直前であり、既に住民が退去した後。40頁とは言うものの、事前に少しでも知識があると「良くぞここまで取材出来たものだ」と感心するはず。逆に何の知識も無くこの書を取ると「なんだこりゃ?」で終わるのではないだろうか。住民退去後、取り壊し直前というのが取材には適切なタイミングだったのだろうと思う。生き生きとした九龍城では取材に行くのは危険だろう。2024/08/25
しげ
11
在りし日の九龍城の「断面図」が最高でした。ひとびとの「営み」がぎっしりと詰まっていて、それらを覗き見する感じがたまりません。空き部屋の写真を見る限りでは、意外と暮らしやすそう。2018/05/17