内容説明
ブラックホールは宇宙最強のエネルギー発生源!?すべてを飲みこむと思われているブラックホールは、じつは多量のガスやエネルギーを放出する天体でもある。近年、宇宙が現在の姿になるために多大な貢献をしてきたらしいことが明らかになった。最新の観測結果や理論的考察から、その意外な真の姿をあぶり出し、近未来の観測計画に思いを馳せる。
目次
1 ブラックホールがまだ見えていなかったころ(アインシュタイン方程式のブラックホール解;ブラックホールには毛が三本? ほか)
2 見えてきたブラックホール(クェーサーの発見;クェーサーの謎―奇妙なスペクトル ほか)
3 明るく光るブラックホール(X線で見る;電波で見る ほか)
4 ジェットが噴き出す!?(電波で見たジェット;X線で見たジェット ほか)
5 ブラックホールを見る―今後の課題(中質量ブラックホール;ブラックホールと宇宙の構造形成 ほか)
著者等紹介
嶺重慎[ミネシゲシン]
1957年生まれ。東京大学大学院理学系研究科博士課程修了。ケンブリッジ大学天文学研究所研究員などを経て、京都大学大学院理学研究科教授。平成18年度井上学術賞受賞、2007年度日本天文学会林忠四郎賞受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
※書籍に掲載されている著者及び編者、訳者、監修者、イラストレーターなどの紹介情報です。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
calaf
9
ブラックホールというのは、エネルギーを吸い込み続けるのは間違いないものの、遠くから眺めると巨大なエネルギー放出体として観測される...らしい...特にX線領域。2012/08/02
shinano
4
岩波さんのこのシリーズはテーマを絞っての内容だから一般人にはやや難しい。直接の観測にはひっかからないブラックホールを、どのように科学は追いかけているかを、比較的新しい観測(と技術)から天体物理現象を解説してくれている。とくにブラックホールへ落ち込んでいく物質の動きである降着円盤の詳細解明は高エネルギー現象(高い電磁波放射)であるところからX線望遠鏡が大活躍している。日本はX線天文学で世界のトップクラスをいっていることに拍手だ。ここでもガンバレ日本だ。2010/05/03
林克也
3
砂山モデル理論を用いた降着円盤からのエネルギー供給の仕組み、なるほどなあ。 さて、この本が出たのが2008年、そしてEHTチームの偉大な仕事によってブラックホールが“見えた”のが2019年4月。人間とは凄いものだと、つくづく思った。宇宙の映像は神秘的だが、理論でその宇宙の、そしてブラックホールの構造を確定し、それを見るための装置や仕組みを作り上げてしまうなんて、本当に凄いことだ。このことは、神が差配して宇宙を造る余地がない、つまり宇宙を作るのに神は必要ない、ということのひとつの事例であると思う。2019/05/25
takejin
2
少し前の本だが、ブラックホールに関する知見は急速に増えているようです。30年以上前には謎の天体だったクェーサーは、今やブラックホールの代表格。降着円盤の発光原理とか、蒸発するブラックホールの発するエネルギーとか。興味は尽きません。2016/07/27
未来来
1
ブラックホール研究をざっと浚っていっているような感じで、詳細は各文献に託されていきます。文章は読み易く丁寧なのですが、途中から下地になる知識が足りない厳しさを痛感させられました。楽しかったので、今後この辺の知識を多少吸収した暁には読み返したい本。《大学図書館》2009/07/17