内容説明
ベルリン患者とよばれる二人の男性が、HIVに感染したのち、それぞれに異なる実験的な治療を受けて、実質的に完治した。二人の感染から完治にいたる経緯と、その症例からどのように突破口が開かれ、新たな治療法につながる研究が進展してきたかを描くドキュメンタリー。科学の背後で、患者は、医者は、研究者は、どんな物語を生きているのか。
目次
第1部 医者、患者、検査(はじまりは、ある家庭医の恋;ベルリン患者その1、家庭医を訪ねる ほか)
第2部 病気、薬、産業(レトロウイルスが引き起こす病;抗癌剤の研究から生まれた薬 ほか)
第3部 治療(HIVだけでなく白血病まで―二つ目の診断;抗癌剤ヒドロキシウレアの適応外使用 ほか)
第4部 完治(再現のできない臨床試験;原理は証明された ほか)
著者等紹介
ホルト,ナターリア[ホルト,ナターリア] [Holt,Nathalia]
HIV(ヒト免疫不全ウイルス)生物学を専門とする研究者。HIV遺伝子治療の分野で重要な成果を挙げている。テュレーン大学、南カリフォルニア大学、マサチューセッツ総合病院‐MIT‐ハーヴァード大学ラゴン研究所で教育・トレーニングを受ける。米国ボストン在住
矢野真千子[ヤノマチコ]
翻訳家(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
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感想・レビュー
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プラス3
7
あれ?エイズって不治の病じゃなかったの!?。カクテル療法とかで感染しても発症を抑えることはできると聞いたことはあるけど・・・。読ませる文章であり、かつエイズ研究者が書いてるだけあって濃い内容の、面白くてためになる一冊です。特に二人目のベルリン患者、エイズ陽性者であり急性白血病と診断された男性へのウルトラCな治療法は驚いた。2016/02/10
ドナ
5
専門用語を優しく書いてあるようだが、それでもちょっと辛い。一人の成功物語に多くの人が希望を光を見い出す。単なるデータとしてではなく、人間の物語として捉えようとする著者に拍手。最初のHIVの薬ががん治療薬として開発されたとは知らなかった。(当然ですよ!)遺伝子操作は私の理解を超えている科学です。 2015/04/04
はる
4
HIV感染が以前ほど大きく取り上げられることは少なくなったように思える。罹患者が少なくなったからであればそれはそれでうれしいし、治療技術が格段に向上しているということであればそれはそれでうれしいことだ。感染が騒がれた頃、江戸時代の性感染-淋病や梅毒か?-患者に対する世間の受け入れ方を何方かが意外に寛容だっと紹介されていた記憶がある。患者個人はHIVにアイデンティまで乗っ取られ苦しみ戦う。研究者はお互いの利益と社会のために戦う。医者は2つを結びつけるため戦う。完治には理想的な関係が求められる。 2020/05/18
DEE
4
HIVが世に出てきたのは自分が小学校低学年くらいだったかな。 当時は同性愛者の病気という認識があって、その意味がわからない子供でも言ってはいけない雰囲気はあった。 それを様々な偶然があったにせよ克服した二人の患者と、それを可能にした医師たち。 医師の間での論文を巡る軋轢はあったにせよ、この結果は大きな進歩だと思う。 ウイルスも自己を殺したくはないので、人間とウイルスが共存する時代が100年後位にやってくるというのが面白い。2016/11/09
Yoshiki Ehara
4
HIVから「完治」した2人の患者のストーリーがものすごくスリリングで、最後まで夢中になって読みました。HIVとの闘いが当初は全くの手探りから始まったことや、偏見や政治が複雑に絡み合う中で研究が進められていることなどが生々しく描かれるところも興味深い。 多少の専門的な解説は避けられないものの、それほど難しく感じること無く理解できた(ような気になった)。2015/04/28