出版社内容情報
場の概念の提唱と『ロウソクの科学』で知られるファラデーは孤独な研究者だった.時代の流れに反して最後まで自然力の同一性を信じた.個人主義的研究と科学の普及に強烈な個性を発揮した類まれな科学者の生涯を描く.
内容説明
名講演「ロウソクの科学」で子供たちを魅了したファラデーの足跡。
目次
1 王立研究所という名の私立の科学普及機関
2 ファッショナブルな王立研究所
3 手職から科学への脱出
4 よろず技術的業務
5 小さな、蔑まれた宗派
6 私事としての科学研究
7 リサーチ・スクール
8 科学を語る
9 旅に病む
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
中玉ケビン砂糖
53
「王立」と冠してはいるものの、当初は農業技術向上のために爵位を持つパトロンたちが出資して科学者や文化人たちのサロンとして創設し、私的な研究を行っていた小規模の施設に国王が後から「認可」を与えたという経緯が意外に思えた。もちろん玉石混交はあり、更なる栄誉のみを求める立場の人間もいれば、本書で取り上げているファラデーのような苦労人も。製本職人の徒弟時代科学に目覚め、国から貸与された宮殿に隠棲するまでの間、数々の発見は(人文科学で言えばウェーバーが3人分いたとしても匹敵するかどうか)。2022/07/19
芙由
2
ハンフリー・デーヴィについて、日本語で書かれたものでここまで詳しいものは見たことがない。彼の晩年の著『サルモニア』『旅の慰め』の内容に触れられているのもありがたい。ファラデーに関する本だが、王立研究所の設立経緯や、その後の存在意義の変遷がわかったのが大きな収穫。ファラデーだけが孤独な科学者なのではなく、当時のイギリスの科学界自体がそういう文化だった。ファラデーの技術公務員的な功績や後半生の病について掘り下げられていたのも興味深い。2020/12/24
むつの花
1
マイケル・ファラデーの生い立ちや、その研究、王立研究所での講演等について書かれている。内容はファラデーのことが中心ではあるが、王立研究所の成立や改革の状況、そして王立研究所に関係した人々(特にファラデーと関係の深いハンフリー・デーヴィ)についても詳しく書かれている。これまでのファラデー伝では、彼がサンデマン派の信徒であったことが触れられてなかったそうだが、本書はファラデーと宗教の関係についても触れている。彼が科学者でありながら、サンデマン派の態度に従い数学を否定していたということにとても驚いた。2014/11/10